Oracle OpenWorld Asia Pacific 2007の3日目はミドルウェアがテーマとなる。ミドルウェアの次世代版、Fusion Middleware 11gについての情報はサンフランシスコのOpenWorld(もしくはそれ以降)まで待つ必要があるかもしれないが、前回のOpenWorldから行った買収に基づく成果がいくつか披露された。
ミドルウェアビジネスは現在のOracleにおいて最も速いスピードで成長している分野となる。同社社長のCharles Phillips氏は2日目の基調講演で「アプリケーションとデータベースの間にあるものは全てミドルウェア」と述べていた。ここを広い範囲でカバーし、同社の完全でオープンなソリューションの基盤となるのがFusion Middlewareだ。ミドルウェアへの投資は同社のアプリケーションビジネスにも活きるため、積極的に行なわれている。
プレスカンファレンスでは、「我々は単にミドルウェアビジネスに参加しているだけではない。この市場を再定義し、数年のうちにNo.1となる」(Oracle Fusion MiddlewareのバイスプレジデントRoland Slee氏)と業界で最も高い成長率を背景とした強気の発言も聞かれた。
同社はこのビジネスをより完全なものにするため、ミドルウェア分野での買収にも積極的だ。このうち大きなものとしてHyperion、Stellent、Tangosol、Bharosaを挙げることができる。
Hyperionは財務向けのパフォーマンスモニタリングツール。この買収により、Oracleはセールスなどをモニタリングするビジネスインテリジェンス、システムをモニタリングするパフォーマンスモニタリングに加えてフィナンシャルモニタリングのツールを手に入れたことになる。今後は様々なアプリケーションの情報から財務的な分析をするツールやインタフェースとして活用されるはずだ。
Stellentはコンテンツマネージメントツール。映像や画像などのアセット管理、版権管理を行うもの。特にこれまでオラクルがリーチしずらかった、エンターテインメント市場などのコンテンツホルダーへアプローチがStellentの既存顧客を通して可能となる。最終的にはOracle Collaboration Suiteと併せて、Oracle Database上のコンテンツ管理がより完全なものとなるだろう。
Tangosolはデータグリッドと呼ばれるソリューションを持つ。これまでOracleでグリッドといえば、データベースのReal Applications Cluster(RAC)だった。つまり、アプリケーションで扱うデータを一度RACに入れてしまえば可用性が保持できる、というわけだ。また、データベースとアプリケーションの間に入れるキャッシュとしてTimesTenも持っている。TangosolのCoherenceはJavaオブジェクトとしてキャッシュやレプリケーションの機構を提供する。これにより、SQLによる永続化を行わなくて済むという利点のほか、永続化をMQやウェブサービスといったサービスを通して行うことができるという利点も生まれる。ミドルウェアグリッドを補強するものだ。この分野における次の可能性としては、Entetprise Managerを使ったシステムプロビジョニングの強化と、データベースも併せたリソースの自動配分が考えられるだろう。これらの機能がFusion Middleware 11gのキーフィーチャーとなるのかもしれない。
Bharosaはリスク・ベース・オーセンティケーションといわれるセキュリティソリューションを持つ。IDとパスワード以外の情報を元にした認証を行うことができるというものだ。例えば、IDとパスワードは正しいものの、通常なら考えにくい、国外からの大量な取引などを検知し、遮断するといったことが可能となる。
また、セキュリティ分野ではPasslogixから技術提供をうけての機能強化も行われている。これまでヘルプデスクを介して行っていたパスワード紛失時のアカウントリセットなどを自動化するというものだ。こうしてシングル・サイン・オン関連の機能が大幅に強化されてる。この分野で現在不足している機能としてはロール管理が挙げられる。つまり、階層的なアクセス制御ではなくデータベース管理者やシステム管理者といった役割による制御だ。現在はIDごとにアクセス権を定義することで行っている管理を大幅に効率化することができる。ロールベースのアクセス管理は近いうちに買収などで解決することが期待される。
アプリケーションビジネスにおける業界特化型ソリューション獲得が目立ったOracleの買収戦略だが、ミドルウェアビジネスでもこうした強化が行われている。