JavaFXはJava環境でRIAを構築する技術としてリリースしたスクリプト言語だ。オープンソースで開発が進められており、内容は随時更新されている。
前2回で基本的な構文を紹介した。これらを踏まえて、本稿の最後となる今回は、より深いJavaFXの世界を堪能しよう。Javaにはないさまざまな構文や演算子を知って、更なる高みを目指そうではないか。
トリガー(trigger)の定義
トリガーは、何かの処理が行われたときに、それを検出して関連する処理を行うものだ。データベースを扱う技術者にはお馴染みの概念だが、Javaプログラマにはリスナー(Listener)といったほうが馴染みやすいかもしれない。ただ、JavaFXのトリガーはJavaのリスナーよりも応用範囲が広い。
リスト4-1に、インスタンスを生成したときにプロパティのデフォルト値を定義するトリガーを定義してみた(Scheduleクラスは第3回リスト3-1で定義したもの)。JavaFXにはJavaのコンストラクタに相当するものは存在しないのだが、トリガーでそれを代替している。
リスト4-1 プロパティにデフォルトの値を設定するトリガー
trigger on ( new Schedule ) {
this.business = '打ち合わせ';
this.place = 'いつもの会議室';
this.start = new Date();
this.end = new Date( this.start.getTime() + 3600 * 1000 ); // 開始から1時間後
}
次に、開始時刻startに値が代入されたら、終了時刻endには自動的に開始から1時間後の時刻が設定されるようにしてみよう。リスト4-2がその例だ。リスト4-3を実行してテストしてみると、トリガーが働いて自動的に終了時刻も設定されているのがわかる。打ち合わせの約束が変更されることはよくあることだが、トリガーがあれば、変更時の設定し忘れを防ぐことができる。ただし、開始時刻が変更されても終了時刻は変更しない場合もあるので、それには注意が必要だ。
リスト4-2 開始時刻の設定と共に終了時刻も設定するトリガー
trigger on ( Schedule.start = value ) {
this.end = new Date( value.getTime() + 3600 * 1000 ); // 開始の1時間後
}
リスト4-3 トリガーのテスト
import java.text.SimpleDateFormat;
import java.util.Date;
// ..... Scheduleクラス定義(第3回参照) .....
function duration( s:Schedule ) : String {
return "開始 {s.start format as <>} - 終了 {s.end format as <>}";
}
var sdf = new <>( 'yyyy/MM/dd HH:mm' );
var s = new Schedule();
println( "new で生成直後 : {duration( s )}" );
s.start = sdf.parse( '2007/07/10 11:00' );
println( "開始時刻設定後 : {duration( s )}" );
s.start = sdf.parse( '2007/07/12 15:00' );
println( "開始時刻変更後 : {duration( s )}" );
実行例
new で生成直後 : 開始 2007/06/20 15:59 - 終了 2007/06/20 16:59
開始時刻設定後 : 開始 2007/07/10 11:00 - 終了 2007/07/10 12:00
開始時刻変更後 : 開始 2007/07/12 15:00 - 終了 2007/07/12 16:00