アジアでOSS開発を進める
そこで復職後も同氏は、LPIで理事を務めるとともに、独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)のオープンソースソフトウェアセンター(OSSセンター)の中の技術ワーキンググループ(WG)のメンバー、財団法人国際情報化協力センター(CICC)の「アジアOSS」事業における一部会の委員長なども務めている。
IPAのOSSセンターで、高澤氏は、「OSSオープン・ラボ」整備に対してアドバイスしている。OSSオープン・ラボは、開発者やSI事業者、ユーザーを対象にした、共通の開発支援、評価環境を提供するためのものであり、さまざまなツール群やソフトウェア群を備えるとともに、遠隔地からネット経由利用可能なシステムになる。
同氏がOSSオープン・ラボ整備に対してアドバイスしているのは、かつてOSDLのラボを神奈川県横浜市に開設したという経験があるからだ。「サーバは何台用意すればいいのか、ラボへの回線の帯域はどれくらい必要なのかという経験が必要とされていた」(高澤氏)のである。
そして現在、同氏が期待を持って熱く活動しているのが、CICCのアジアOSSだ。
アジアがOSSに取り組む意義
アジア各国では、OSSへの期待が高まっており、さまざまな振興策が展開されているが、各国の現地語に対応したOSSの普及、OSSを活用できる人材の育成、標準化活動などの課題が存在している。そうした課題に対して、CICCでは、アジア各国の関連団体と連携して、OSSにかかる協力活動を展開しているのである。高澤氏は、アジア地域でのOSSへの取り組みをこう見ている。
「アジアの地域各国は、日本よりもMicrosoftが市場を占有しています。技術者たちはWindowsベースでしか育っていないと同時に、ライセンスを支払わざるを得ないために、海賊版ソフトが出回るという状況を生み出しています」
こうした問題を解決するため、アジアOSSでは、OSSが地域各国での産業振興、技術者育成の役に立つという意識を、各国にも持ってもらおうとしているのである。その一環として、各国でOSSを利用しようとしているのだ。高澤氏がアジアOSSに取り組む意義について、こうも分析している。
「今までのOSSは、米国や欧州が中心となっています。つまり米国という第一の勢力、欧州という第二の勢力ができあがっている。それに連携する形で、OSSによってアジア各国がOSSに取り組むことで、第三の勢力として、技術者コミュニティーが形成されればいいし、さらに、そこから新しいアプリケーションを開発されればいいという期待を持っています」