経営課題解決の手段としてのエンタープライズ2.0
エンタープライズの一部としてエンタープライズ2.0が定着するとすると、それは企業内でどのような役割を果たすのだろうか。このことは忘れられがちなのだが、企業からみたエンタープライズ2.0はあくまで経営課題解決の手段なのである。
例えば、ブログやSNS、Wikiなどの集合知という発想は、どんな経営課題を解決するだろうか。あなたの会社では次のような課題を抱えてはいないだろうか?
[コミュニケーションの課題]
- 組織間のコミュニケーションが円滑に回っておらず、手戻りやトラブルが起きている。
- 組織の個別最適に陥り、組織の壁を越えた課題解決が難しい。
[知識の再利用の課題]
- 同じような失敗を繰り返している。成功を横展開できていない。
- 各自が持っている経験・ノウハウを効果的に相互活用できていない・
[人と人とのネットワークの課題]
- 社内の誰が担当しているのか、経験/ノウハウを持っている人がどこにいるのかわからない。課題解決に最適な人を探すのに多大な時間がかかっている。
- 組織の壁を超えた、人材交流組織が不足している。組織の壁が高く、風通しが悪い。
こうした課題を解決する手段として集合知の考え方は威力を発揮する。
たとえば、既存の組織(第一の組織)では解決できない組織横断型の課題を解決するためのプロジェクトチームやタスクフォース(第二の組織)、組織間で専門的知識を交換するためのナレッジコミュニティ(第三の組織)を構築することで「コミュニケーションの課題」や「知識の再利用の課題」を解決することができるが、こうした第二、第三の組織を円滑に運営するために、ブログ、SNS、Wikiといったツールは威力を発揮する。
また、一方で誰が何を知っているかを明確にし、社内の知らない人と人とをつなぐ仕組み、ノウハウを構築することで「人と人とのネットワークに関する課題」を解決できるが、こうしノウハウを構築する上でSNSの考え方は参考になる。
このように、あくまで具体的な経営課題を解決するための手段として、エンタープライズ2.0の考え方やコンセプトは大いに活用することができる。
しかしそれは、単にブログ、SNSを入れようといった軽薄なものではなく、企業の経営課題は何かを明確に定義したうえで、現状の課題を分析し、その課題を解決するにはどうしたらいいかの計画を練る、という業務改善活動そのものに真剣に取り組んだ上で実現されるものであり、エンタープライズ2.0はあくまでその1ピースに過ぎない。
2008年、経営課題解決の手段としてのエンタープライズ2.0の活用が本格化するに違いない。