帳票は削減すべきものか?
情報系システムの開発や更新では、社内あるいは社外での情報伝達手段としての帳票をいかに削減するかがポイントとなることが多い。
情報系システムでの代表格とも言えるのがビジネスインテリジェンス(BI)だ。このBIにおける、そもそもの根本的発想は、エンドユーザーが直接的にコンピュータと対話し、蓄積されたデータを分析して、有効な業務上の知見を得ることにある。従来からある静的な紙の帳票とは対極にある考え方のように思える。しかし、帳票を完全に撤廃することを前提とした情報系システムの構築は適切と言えないことが多いだろう。
米国におけるデータウェアハウス(DWH)とBIの先進的ユーザーとして知られるあるカジノの話だが、現場のマーケティングマネージャーへの情報配布手段は1枚の紙の帳票だけだそうである。
DWHの先進的ユーザーというと、ほとんどの従業員がコンピュータと対話しながら複雑な分析をしているかのようなイメージがあるかもしれないが、実際にはそういうわけでもないのだ。
それでも、このカジノはDWHとBIから大きなビジネス上の価値を獲得している(もちろん、バックオフィスではBIのテクノロジーを駆使して複雑な対話型の分析を行う人がいるのだろうが)。
情報系システムが価値を提供する3つの要素
一般に、情報系システムが価値を提供するためには、「情報の収集」「情報の分析」「情報の配布」――という3つの要素のバランスを適切に取ることが必要だ。3つの要素の中のどれか一つでも不十分であれば、情報系システムの全体的価値は大きく損なわれるだろう。
ここで言う「情報の分析」とは、たとえば、オンライン分析処理(On-line Analytical Processing:OLAP)やレポーティングなどのいわゆるBI系のテクノロジーが中心となる要素だ。この要素の重要性は外部からも見えやすく、一般的に広く理解されており、情報系システムの企画・設計・開発においても相応のフォーカスが当てられることが多い。
その一方で、他の2つの要素はどうしても軽視されがちであり、結果として、せっかく高度な情報分析テクノロジーを採用しているにもかかわらず、システムが十分な価値を発揮できていないケースも多い。
たとえば、「情報の収集」の要素が適切に行われていないと、データが不正確であったり整合性がとれていない状況になり、いかに適切な分析を行っても意味のある結果を得ることはできないだろう。これが、いわゆるデータ品質の問題である。
そして、「情報の配付」が重要であるのは論を待たないだろう。いかに品質が高いデータを用意して、高度な分析を行っても、その分析結果が企業内で必要とする人に必要とする時に届けられなければビジネス上の価値を発揮できないのは当然のことだ。