この迅速な意志決定ができるというメリットは、たとえば、製造業におけるサプライチェーン上で情報統一という局面にも役立てることができる。ビデオ会議というツールを使うことで、多くの情報をサプライチェーンに参加する社内外の多くの参加者から吸収し、その会議の場で、どう動くべきか意志決定をすることができる。
また、迅速な意志決定ができるということは、「短期化する製品ライフサイクルマネジメントにも対処することにもつながる」(三浦氏)という。市場の急激な変化によって、製品が開発されてから市場に流通され、人気がなくなるまでのライフサイクルマネジメントは年々短期化しているが、これに対処するために、拠点が異なる開発や製造、営業、マーケティングの各部門がビデオ会議システムで遠隔地から同じ会議に参加することで、次の対応をどうするか、対応策を即座に決定することができるのである。
迅速な意志決定が可能になるということは、それだけ生産性を向上させることにもつながる。会議のために各拠点から出張するためにかかる移動のコスト、出張費用はもちろん、その移動時間を削減できるからだ。目に見える出張費用を削減できる上に、その移動時間を有効に活用することができるのである。
移動時間を削減できることの効用は、会社だけでなく社員にも影響する。効率性を高めることで、今流行となりつつあるワークライフバランスの向上にもつなげることができる。また、移動時間を削減できるということは、それだけエネルギー消費量や二酸化炭素(CO2)排出量の削減という点にもつながってくる。つまり、ビデオ会議システムは、社員にもそして地球にも優しいIT機器と言うことができるのである。
業務を革新できるツール
三浦氏は、「ビデオ会議システムを導入することは、企業の業務を革新することができる」と語り、生産性を向上させる以上のメリットがビデオ会議システムにあることを説明する。
独の自動車メーカーであるVolkswagenでは、設計・製造の専門家と販売代理店をタンバーグのビデオ会議システムで接続。導入以前は2週間かかっていた自動車の修理が、導入以後は約半日ですむようになっているという。これは、ビデオ会議システムを活用することで、専門知識を有効活用すると同時に、顧客満足度を向上させることにも成功している事例と言えるだろう。
ビデオ会議システムによって、いかに専門知識を有効活用できるかという点では、米国の油田開発企業Schlumbergerの事例もユニークだ。同社の場合、本社の技術者が現場の掘削チームとビデオ会議システムで相談しながら的確な決定を下すことで、1人の技術者が複数の油田をサポートすることに成功しているのである。この事例では、専門知識を有効活用していると同時に、意志決定プロセスを短縮させており、加えて、ワークフローを改善するのに、ビデオ会議システムが有効だという証左ということが言えるだろう。