最近、テレビ会議やウェブ会議システムの利用用途が広がっているとよく言われるようになった。1990年代にもほぼ同様のことが言われたが、現在の広がりが一昔前にはなかった動きを見せているのは間違いない。
その背景として、会議システムの性能や機能が向上したことに加え、ISDN時代とは違い、ブロードバンドの普及が大きく影響していることが指摘できる。しかし、それらに加えて、日々会議システムを使いこなすユーザーたちの発想と工夫に負うところも大きいのだ。
人材採用にテレビ会議システムを活用
会議システムベンダーから利用方法などについての提案ももちろん行われるが、むしろ現場で会議システムを使いこなしているユーザーから新たな利用方法を教えられることが結構ある。というのも、実際に現場で使ってみないとわからないこともあるからだ。導入目的とは違うところで利便性を新たに発見したという話も聞く。また熱心なユーザーの中には会議システムに対して“一家言”ある人もいる。そういった頼もしいユーザーからのフィードバックが、会議システムの製品としての進化と利用用途の広がりを後押ししたことも間違いないだろう。
会議システムは、もともと人と人とのコミュニケーションを補完するミーティングツールとして開発されたシステムだ。テレビ会議システムが、英語で「talking head(おしゃべりする頭が見える)」ツールといわれるゆえんでもある。
会議システムで本社と支社や工場を結んで、業務を効率化させるというのは定番となっている使い方だ。製造業では、部品や設計図面などを共有した会議を開催しているという事例や、アパレル業で衣服のデザイン会議に活用されているという事例を最近聞くことがある。ほかにも、人材採用で地方応募者の一次面接をテレビ会議システムで行ったり、新商品説明会や社員研修にウェブ会議システムを活用したりする企業もある。
また、日本特有のものかもしれないが、毎朝の朝礼や新年の社長の挨拶を全国の支社支店に対してテレビ会議で行うというのはポピュラーになっているようだ。最近では、テレワークでのウェブ会議システムの活用を進めたりする企業や、東京本社と大阪支社をテレビ会議システムで常時接続して、呼べばすぐに会話ができる環境を提供することで、お互い離れていても仕事をしやすいような雰囲気を作りだそうとしている企業もある。海外では、顧客やクライアントとのミーティングにも使われているし、航空機にテレビ会議システムを搭載するところもある。
社内の業務効率化以外にも、自社のビジネスを促進させるという方向でも使われるようになってきた。銀行などでは、支店に来店した顧客に対して口座開設や金融商品サービスの遠隔相談を行ったりするサービスを提供している。ある証券会社では、海外から遠隔で市況説明会を行ったり、「ウェビナー(Webinar:ウェブ会議システム上で行うオンラインのセミナー)」で投資説明会などを行ったりしている。生保系のある企業では、ウェブ会議システムを使った受付システムが稼働していると聞く。
これらの例から言えるのは、テレビ会議システムやウェブ会議システムの使い方は工夫次第ということだ。こうした企業では自社にあった使い方を自社なりに考え出して工夫しているのがうかがえる。それは企業の大小を問わず言えることだろう。