「データセンターの電力消費量は世界の総消費量の0.5%近くを占めている。世界のデータセンターの電力消費量は2000年から2006年までの間にほぼ倍増した」――。 業界全体でグリーンITに向けた取り組みが続けられているが、その中でも緊急の課題となっているのが、データセンターで消費される電力の問題だ。その実態について、米サーバベンダーRackable Systemsの代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)のMark Barrenechea氏は、先頃行われたネットワークコンピューティングに関するイベント「Interop Tokyo 2008」の講演の中で、冒頭のように指摘している。
Barrenechea氏は、データセンターのエネルギーコストが増大していると指摘。Uptimeという業界団体の調査によれば、世界のサーバ台数は年平均16%で増大しており(インストールベース)、2010年には4100万〜4300万台に到達すると見られている。また、同調査では、サーバ1台あたりのエネルギー消費量は、処理能力の向上に伴い9%の割合で増大するとともに、エネルギー単価は平均4%で上昇しているという。
同調査では、データセンターから排出される温室効果ガスを調べている。それによれば、二酸化炭素(CO2)排出量を世界総排出量に占める割合で計算すると、航空会社が0.6、造船所が0.8、製鉄所が1.0であるのに対して、データセンターが0.3となっている。これを国との比較で見ると(年間ベース)、アルゼンチンが142メートルトン、オランダが146メートルトン、マレーシアが178メートルトンであるのに対して、データセンターが170メートルトンであるという。データセンターはアルゼンチンやオランダよりもCO2を排出しているのである。これらの調査結果を見れば、データセンターがグリーンITの中でもいかに解決すべき課題であるかが分かるだろう。
「今後2010年までの米国のデータセンターのエネルギー需要の増大量は、新設発電所10基分に相当するという深刻な事態だ。さらに、大規模データセンターを運用している企業の90%は、今後30カ月以内に電力供給と冷却能力を拡大させる必要がある」(Barrenechea氏)
グリーンITの緊急性は日本でより高まる。「日本のエネルギーコストは高い」(Barrenechea氏)からだ。2006年の産業用エネルギーコスト(米ドル/キロワット時)で比較した数値でみると、フランスが0.05ドル、米国が0.06ドル、韓国が0.08ドルであるのに対して、日本は0.12ドルという結果となっている。
また、2008年になってからは、「サーバ価格をエネルギーコストが上回るようになっている」(Barrenechea氏)。1Uサーバの取得・運用にかかる年間コストを米国で計算してみると、2008年になってからエネルギーコストがサーバの取得・運用コストを上回っているのである。
ここまで見てくれば分かるように、「日本にはグリーンなデータセンターが必要である」(Barrenechea氏)ことは論を待たない。