2007年は、3月にOracleがHyperion Solutionを買収し、10月にはSAPがBusiness Objectsを、そして11月にはIBMがCognosを買収するといったように、大手企業によるビジネスインテリジェンス(BI)ベンダーの買収が相次いだ。業界勢力図を塗り替える勢いで起こったこれらの買収について、Forrester ResearchのシニアアナリストTim Sheedy氏は「どの市場でもこのようなコンソリデーション(統合)は起こるものだ。2007年にBI業界で一気に統合が進んだのは、黙っていると他社に奪われてしまうのではないかというパニック状態から起こったのではないか」と分析している。
Sheedy氏がBIベンダーの買収で「意義がある」と感じるのは、「情報マネジメントプラットフォームを持っている企業が、そのプラットフォームにBI機能を組み込もうするケース」だ。そういう観点から同氏は情報マネジメントプラットフォームを充実させるためにCognosの買収に踏み切ったIBMの動きは理解できると評価している。IBMはすでにCognosの買収前から、データベースはもちろんデータウェアハウスやデータ管理、分析機能、コラボレーション機能など、情報マネジメントプラットフォームとして必要な製品をほとんど網羅していた。それがCognosの買収によってレポーティング機能が加わり、より完全なソリューションに近づいたというのだ。IBMはCognos以外にも、過去数年で情報マネジメント分野で数多くの買収を行ってきた。
「IBMの言う『IBM Information Server』は、情報マネジメント分野で10以上のソフトウェアを集めて作られたものだ。この機能もあの機能も使いたいと思う企業は、これまで複数のベンダーからソフトウェアを買い集めなくてはならなかったが、IBMがこのように機能をまとめた製品をリリースしたためその必要がなくなった」(Sheedy氏)
一方Sheedy氏は、SAPによるBusiness Objectsの買収については納得していない様子だ。アプリケーション企業であるSAPが、Business Objectsの持つBI機能を組み込むわけでもなく、買収後も独立した別の企業として運営しているためだ。
Sheedy氏は「もしSAPが買収した企業のテクノロジを重要だと考えているのであれば、自社の製品に組み込むべきだ。Business Objectsを別企業のままにしていることからして、SAPはBusiness Objectsの顧客を取り込みたかっただけに見える」と話す。同氏によると、Business ObjectsはSAPに買収される以前、独自でデータマネジメント分野での買収を進めていたというが、SAPはBusiness Objectsをレポーティングエンジンとしてしか見ていないと指摘する。
残った独立系BIベンダー大手は1社のみ
こうしてBI専業ベンダーが次々と買収され、独立系BIベンダーの大手で残っているのはSAS Instituteのみとなった。昨年の買収劇の中で「きっとSASにアプローチした企業はあったはずだ」とSheedy氏。ただ、SASのCEOであるJim Goodnight氏は、2007年10月に行ったZDNet Japanのインタビューの中でも買収に応じるつもりはないと言い切っていた。