“人材”で発展した日本
これからの日本は、人材を輸出すべきであり、そのキーとなるのはサービスだ――。先月開催された、日立製作所のミドルウェアをテーマにしたセミナー「HITACHI Open Middleware World 2008 Autumn」の特別講演で、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は、今後の日本は人材を海外に輸出していくべきだと主張している。
鳥越氏の特別講演のテーマは「職人(技術・環境)輸出大国ニッポンへ」。話は、4月に中国の内モンゴルへ行ったところから始まった。
「北京から飛行機で3時間のところにある銀川(ぎんせん)市からまた車で3時間。ゴビ砂漠の先端部分に行ってきたが、なぜ、そんなところに行ったのか。黄砂を調べるためだった。黄砂の源を探して、この内モンゴルへ行った」
鳥越氏によると、そこは砂漠化が激しく、人家が砂に飲み込まれ、大気も汚染されていたという。その微細な砂が偏西風に乗って日本へ来るということだ。その黄砂は甚大な被害をもたらしているが、今年長崎県の五島列島で発生した光化学スモッグもこの黄砂が原因だと言われているという。
鳥越氏の話はそこから、講演の「職人輸出大国ニッポンへ」というこの日のテーマに移っていく。
「しかし、その中国の砂漠に植林をしている日本人がいる。アジア太平洋地域の国々で農村開発や人材育成を行っているNGO(非営利組織)のOISCA(オイスカ)という団体の活動を見たとき私は、“日本は人が命”ということを実感した」
鳥越氏が言葉を続ける。
「日本は天然資源が少ない。あるのは水と空気と山、つまり木材である。しかしそれでも、日本は米国に次ぐ世界第2位の経済大国になった。今では、清潔、便利、安全な国だといわれているが、これをどうやって実現したのか。それはもうひとつの資源があったからである。つまり、人材という名の天然資源があったからだ」
モノづくりの国・ニッポン
日本はモノづくりの国、というのが鳥越氏の日本に対する一貫した見方だ。
「最近はITや金融に注目が集まり、資本が資本を生むということも言われたが、日本の本質は違うと思う。日本の基本はモノ作りである」と言って鳥越氏は、金属深絞りの世界的職人といわれる岡野雅行氏の話を紹介した。