「MoBillsという当社のリアルタイムビリング基盤は、従来はバッチ処理が常識だった料金計算をリアルタイムに処理するプラットホームです。CDRの発生ごとにワントランザクションで請求額を更新するため、流れてくる大量のCDRを業務アプリケーションがメモリテーブルを参照しながら処理していくことで、リアルタイム性を保ちながら最後の請求情報を更新していくという、たぶん世界でも初めての処理方式を採用しています」
このALADINとMoBillsで、冒頭に紹介したドコモの4つの経営情報のうち、オペレーション指標と収益のすべての項目、そして費用のうち営業費用の代理店手数料がリアルタイムに把握できるということになる。

それでは、残るCS情報についてはどのような取り組みをしているのか。
「ドコモはお客様からドコモショップ、コールセンター、インターネット、iモードなどを通してさまざまなご要望や苦情をいただいています。これが1日にだいたい5000件ありますが、これは先ほどのALADINでリアルタイムに収集しています。ただ収集するだけでは事業に活かすことができませんので、オペレータが登録したお客様の声をテキストマイニングを使って約2時間ごとに自動分析、サービスや端末、料金というように分かりやすくカテゴライズして、受付後およそ1週間後にはドコモ全体でお客様情報を共有しています」
CS情報もALADINでリアルタイムに把握、共有しているということである。残るは、ALADINがカバーできない費用系項目の大半の部分。経理、人事給与、契約、設備、固定資産業務といったいわゆるバックヤード的な社内業務だが、これについても営業系のALADINのシステムをそのまま適用しているという。
「企業活動の全業務をALADIN化してしまえば、ドコモグループ全体の収支状況をリアルタイムに見ることができるのではないかと考えたわけです。その考えに基づいて開発したのがALADIN、MoBillsに続く第三のシステム、DREAMSです」

「決裁」のクリックですべてが流れる
従来の業務処理ではリアルタイムマネジメントが実現できないことを、西川氏はこう説明した。
「リアルタイムマネジメントを実現するためには業務の流れ、カネの流れ、モノの流れのそれぞれと一致したリアルタイムなデータ入力が可能なように業務を抜本的に改革する必要があります。従来は業務や決裁文書を作成してから上長の承認の印鑑をもらって発注業務を行ったり、決済業務を行ったりしていましたが、それでは取引とデータ入力が連動していないため、リアルタイムに取引の正確な状況は把握できません」
それに対し、NTTドコモがリアルタイムマネジメントを実現するために行ったことは何か。
「本来あるべき姿は何かを考えたとき、取引とデータ入力は同時でなければならないということです。それが実現できれば締め日という概念がなくなり、その時の経営状況がいつでも正確に把握できることになります。そのためDREAMSで入力方法を工夫し、スケジューラとワークフローツールを採用しました」