販売実績の集計を5日に短縮--連結経営強化で資産効率向上図る:富士フイルム

宍戸周夫(テラメディア)

2009-07-07 22:00

 富士フイルムの創業は1934年。2009年の今年、ちょうど創立75周年を迎えた。同社は、この75周年に向けていくつかの経営改善計画を進めてきたが、そのひとつに連結経営力の強化がある。同社を支えた写真フィルムの需要が減少する中で、大胆な構造改革が急務となり、グループ全体で収益を確保するという命題が出てきた。そこで同社が取った一手とはどんなものなのか。先頃開催された「Oracle OpenWorld Tokyo 2009」の講演から、その取り組みを紹介する。

連結経営の強化が命題

 持ち株会社である富士フイルムホールディングスは、富士フイルム富山化学工業富士ゼロックスなど連結子会社234社(2009年3月末現在)を持ち、連結従業員数は7万6000人余りに達する。

 持ち株会社制に移行したのは2006年だが、その2年前の2004年から“第二の創業”を掲げ、創立75周年に向けた中期経営計画「VISION75」を打ち出した。その背景にあったのは、それまで同社の収益の柱であった写真フィルムの需要の減少だ。

 デジタルカメラの台頭によって写真フィルムを中心とするイメージング事業の構造改革は急務となった。そこでこれまでの強みを生かしてメディカルシステムやライフサイエンス、光学デバイス、グラフィックスシステムなど今後成長が見込める事業分野を開拓。そこに集中投資し、新たな成長軌道を確立するというのがVISION75の趣旨である。

 このVISION75では、連結経営の強化が取り組みの具体的な命題として上げられた。グループ全体としてそのパワーを十分発揮しようというもので、具体的なテーマとして(1)個別最適から全体最適へ、(2)損益だけでなく資産効率向上、(3)経営情報のスピードアップ――という3本柱が打ち出された。

 富士フイルムホールディングス経営企画部の中西進氏は、その個別最適から全体最適への流れをこう説明する。

 「富士フイルムは従来、会社ごとの個別経営を進めてきました。それぞれの会社が、一番良いことをやっていればグループ全体で良い結果が生まれるとの経営理念でやってきたわけです。つまり、事業部の単独損益志向という考えがなかったともいえない状況があったのです。しかしそれでは良くないということで、各社の情報をすべて事業部別に分解して報告するようにし、予算も各社の予算を本体の事業部が一緒になって立案していくという体制に変えようと考えました」

3つの課題を解決できるソフトは

 同社はイメージング・ソリューション、インフォメーション・ソリューション、ドキュメント・ソリューションという各分野で13の事業を持つ。しかし、その13の事業がグループの関係会社と一体となり、連結ベースでの予算を立案する仕組みがなかった。同時に、事業部が連結ベースでの実績を把握できる仕組みもなかった。まず、それが課題のひとつだ。

 2番目の課題が資産効率の向上。従来は売上高と営業利益中心の管理が中心で、資産管理の意識も低かった。そのため、EVA(経済付加価値)や連結調整などの複雑な計算が自動的にはできなかった。また、事業ごとのバランスシートを連結ベースで管理する仕組みもなく、事業部は関係各社の資産を管理できなかった。

 3番目の課題は経営情報のスピードアップだ。連結月次実績データをタイムリーに全社で共有できる仕組みがない。そして、事業部がグループ各社に対し、承認や差し戻しをしながら連結損益を組み立てる仕組みもなかった。

 「こうした課題に対し、ソフト選定にあたっての要件を列挙しました。そこでまず、300の関係会社のデータの閲覧権限をきちんと管理しながら、効率的に情報共有できる仕組みが必要だと考えました。それから、インプットと同時にデータが見られるという仕組み、つまり現状ではウェブベースの連結管理の仕組み、ユーザーが複雑なロジックも柔軟に作成できる仕組み、最後にデータの提出管理ができ、承認や業務プロセスの管理ができる仕組み、というようにいくつかの要件を上げてみました」

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