その9月に問題点の洗い出しから対策方法の検討、導入コンサルタント会社とソフトの選定を開始、わずか1カ月で今回のシステムの内容を決めている。同年10月にはスケジュール詳細の作成、要件検討、関係会社と事業部へのヒアリングを完了、続いて2カ月で一気に開発、テスト、データ移行、インフラ整備、トレーニングを終え、2006年1月の本番運用へとこぎ着けた。
「かなり無理のあるスケジュールでしたが、本番にのせるという意味では9月からスタートして、4カ月ほどで導入できたということになります。しかし、これによって事業部が連結ベースの予算を主体的に立案し、経営会議や取締役会でコミットできる状態になりました。また、事業部が月次実績を連結ベースで早期に把握できるようになりました。さらにはEVAや連結在庫月報など事業別の資産に関する管理も可能になり、必要なときに必要な分析をどの事業部でも行えるようになりました」
従来は、データが欲しいという要求が経営企画部に寄せられ、同部が必要なデータをExcelに落として渡すというような形が多かった。しかし、新たなシステムで事業部はいつでも自分たちの権限があるデータを、IEを通して見ることができるようになった。それが非常に大きな導入効果だったようだ。
今後は、米州本社や欧州本社への展開も考えている。
「このシステムはウェブベースですので、アメリカにある関連会社を米州本社が管理しようと思ったとき、同じインフラを使って米国全体の管理が可能です。つまり新たな投資をせずに同じ管理が行えるということで、二重三重の投資が防げたのではないかと思っています」
また事業ごとの総資産利益率(ROA)や事業付加価値、事業キャッシュフローなどの導入のように、新たな経営管理ニーズにも比較的容易にできる基盤が整った。さらに、明細化、期間損益と一時損益の分離、責任損益と責任外損益の管理など事業管理の精緻化、固定費と変動費をきちんと管理する直接原価計算の導入なども可能になった。
同社ではこのシステム基盤に基づき、具体的で新たな取り組みをいくつか進めている。この4月からスタートしたのは、事業別連結販売実績の早期化だ。従来は11~12日という単位で集めていた販売実績を5日で集めることにし、連結の売上高を早期に把握することを可能にしている。さらには事業別管理会計の連結調整への反映や、損益だけでなく管理内資産と管理外資産の分離など、連結経営力を向上するため、より高度な活用を検討している。
社名 | 富士フィルムホールディングス株式会社 | ||
---|---|---|---|
設立 | 1934年1月20日 | 所在地 | 東京都港区赤坂9-7-3 |
資本金 | 403億6300万円 | 連結従業員数 | 7万6252人 |
連結子会社数 | 234社 | 連結売上高 | 2兆4343億4400万円 |
事業内容 | |||
イメージングソリューション(カラーフィルム、デジタルカメラ、フォトフィニッシング機器、写真プリント用のカラーペーパー、薬品・サービスなど)、インフォメーションソリューション(メディカルシステム・ライフサイエンス機材、グラフィックシステム機材、フラットパネルディスプレイ材料、記録メディア、光学デバイス、電子材料、インクジェット用材料など)、ドキュメントソリューション(オフィス用複写機・複合機、プリンタ、プロダクションサービス関連商品、用紙、消耗品、オフィスサービスなど)の開発・製造・販売・サービス |