求められるのは「いかに正しい意思決定をするか」
意思決定プロセスの研究で知られたHerbert A. Simonは、人の意思決定過程について、行動に移す前の過程を次の3つの段階で整理している。
まず、意思決定を必要とする何らかの「問題」の存在を発見あるいは認識するのが「Intelligence」の段階であり、ここが意思決定過程の始まりだ。組織は目的を持っており、目的達成のための望ましい状態と現在の状態とのギャップを認識する。
次に、望ましい状態と現状とのギャップを解消する手段を考慮するのが「Design」の段階だ。代替案とはギャップを解消する手段のことであり、代替案のデザインをするときには、目的達成に影響を及ぼす要因について、よく検討する必要がある。
最後に、デザインされた代替案を評価し、選択する「Choice」の段階に移る。評価は、問題解決にかかる費用と効果によって判定され、最も良いと判断された代替案が選択される。そして、選択された代替案が実行される。
また、意思決定の問題について一般的に、次のような抽象的なモデルで表すことができる。
この式において、「x」は意思決定する人が自分でコントロールできる要素を表しており、これを「決定変数」と呼ぶ。意思決定過程のDesign段階における代替案が、この決定変数に相当する。一方、「y」は意思決定する人が自分で選択したり決定したりすることのできない要素を表す。これを「環境変数」と呼ぶ。そして「z」は、決定変数と環境変数のそれぞれの値と、両者の関係によって決まる。これを「結果変数」と呼ぶ。
このモデルが示す重要な点は、意思決定においては、「意思決定する人」が自分でコントロールできない要素が存在し、またコントロールできる要素とコントロールできない要素の関係によって結果が決まってくるというところだ。
つまり、この連載の第2回(イタいのは「自分」を分かってない自分--客観的に自分を知る方法)でも述べたように「敵を知り己を知る」ことが大切なのである。環境変数をよく分析し、最も望ましい結果変数が得られるような、決定変数を選択すべきである、ということだ。
このような観点では、従来の応用システムは、オペレーションコントロールにおいて著しい効率化を達成することができたが、企業の経営者が求める経営戦略と現状のギャップをひと目で把握し、代替案を抽出するための情報を直ちに提供することは不得意であった、と言える。
Larry Kahanerは著書「競争優位の情報戦略」の中で、「インフォメーションは事実に基づいてはいるが、意思決定の拠りどころにはならない」「決定を下すためにはインフォメーションではなくインテリジェンスが必要である」が、「インフォメーションは多過ぎて、インテリジェンスは少な過ぎる」と指摘している。
「インフォメーション」は分析され、ろ過されてはじめて「インテリジェンス」になる。こうしたインテリジェンスと呼べる情報を、いかに効率的に提供し、正しい決定に導くか。それを実現できるITが、企業の戦略を支えていくのだろう。
今回は、企業の戦略を支える意思決定と既存のコンピュータシステムについて考えてみた。次回からは戦略に役立つITツールの最新情報を紹介していくことにしよう。