物流を可視化--グローバル化をSCMで支援:パナソニック電工 - (page 2)

宍戸周夫(テラメディア)

2009-07-30 08:00

 そこで同社は、囲い込みの意味も含めて、こうした工務店などに端末を設置、ブラウザで同社の商品を見て発注してもらう体制を構築した。そこでは引き合い情報なども管理、適正在庫に結びつけた。

 2番目はPSI。これは工場と営業を結びつけるプロセスであり、最もウェブがその力を発揮するところとも言える。住設建材などでは代理店販売が主で、月末の押し込み販売なども多い。そのため、従来はどうしても月次での生産体制が中心だったが、SCMで週次生産体制に移行。デリバリ対応力の強化とともに在庫削減を実現した。

 3番目は調達。ここでウェブが効果を発揮したのはサプライヤーとの間の電子データ交換(EDI)だった。同社は中小のサプライヤーが多く、そうしたサプライヤーには十分なシステムがないケースが多い。そこで同社にサーバを置き、注文書がEDIでサプライヤーに流れ、ブラウザから注文書を取り出すことができるという仕組みを作った。出荷伝票も同様だ。

 同社には約2600社のサプライヤーがあるが、そのうち2000社とはこうした仕組みで調達を実現している。この部分はSCM導入で最も効果が発揮できた部分だという。仕組みはほぼ完成している。

 それに対し、同社が今一番力を入れているのが製造プロセスだ。ここは、各事業本部で別々の生産管理システムが使われていたが、調達プロセスを含め日本オラクルの統合基幹業務システム(ERP)パッケージ「Oracle E-Business Suite」(Oracle EBS)でコアの部分を統合した。ここでは電子カンバンやスケジューラ、PDAなどによる生産合理化と一緒に展開することで、システム導入効果を増すという考えで進めている。現在はまだOracle EBSの部分は4割程度だが、順次旧システムをOracleに置き換えていく計画だ。

 最後は物流プロセスだが、これもカイゼンを進めている。住設建材事業の代理店も、以前は都心部に倉庫を持っていたが、現在はそれが遠隔地に移動したか、または倉庫を持っていないというケースも増えてきた。こうした代理店は、資材は極力パナソニック電工から直接施行現場に運んで欲しいという要求を持つようになってきている。

 これに対し同社は倉庫管理システム(Warehouse Management System:WMS)や邸別配送、また小コストダウンを実現する「スルーデポ」と呼ばれる方式を採用することで、高付加価値物流を実現しているという(スルーデポ方式は、積み替え回数の多さから発生する荷痛みを最小化するために、出荷拠点から得意先至近の路線便ターミナルまで貸切チャーター便で配送、そこからの得意先別配送を路線便にすることで、荷痛み発生の低減とコスト抑制を両立させる配送する方式)。

グローバルでのSCMとその評価は

 国内に続き、同社のグローバルでのSCMの取り組みがスタートしたのは2007~2008年頃である。当時は、本社の情報システム部門が「2008年度は、グローバルSCM本格展開の年」というスローガンを掲げている。国内と同様、受注、PSI、調達、製造、物流の5つのプロセスで革新を行うという宣言だった。

 その背景にあったのは、海外はなにごともスピードアップが必要という問題意識だった。海外拠点では、国内と違ってリードタイムが長い、顧客からの問い合わせに迅速に対応できない、受注、生産、調達のサイクルが長いなど、“日々、随時”というマネジメントができていなかった。海外は国内に先行してOracle EBSが導入されていたが、それを十分使いこなしていないという実状があったのである。

 そこでPSIでは、グローバルPSIということで、各拠点でPSIを実現し情報共有を進めながら最適な出荷計画、在庫計画、生産計画を実現している。また集中契約購買を拡大し、電子部品の工場が多い中国、東南アジアなどではパナソニック・グループとして集中購買を進めた。

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