長年の間、スパム業者はどこの誰でも標的にするという基本的なマスマーケティングコンセプトに頼っており、量のために質を犠牲にしてきた。
状況は変わった。少なくとも一部は。一部のスパム業者は、市場細分化の利点を悟り、入手したデータベースや電子メールアドレスを、国に基づいて細分化し始め、スパムに受信が見込まれる相手の母国語を使い、地域に合わせたものにしようとしている。
現在では、スパムがマルチリンガルになっているだけでなく、サイバー犯罪者だけを対象としたオンデマンドサービスも登場しており、ゲームが変わろうとしている。このサービスは、サイバー犯罪者が行うマルウェア・スパム・フィッシング詐欺の活動のメッセージを、標的となる受信者の母国語に簡単にローカライズすることが可能にするものだ。
ここでは、そのようなサービスの1つを検討し、これらのサービスによって自動翻訳サービスの利用が不可避的に減少するであろうことを示そう。
最近発表されたばかりのMessageLabs Intelligenceの7月のレポートによれば、スパム全体の5%前後が標的となる受信者の母国語になっており、メッセージの大半は自動翻訳サービスを使って翻訳されているという。
世界的に見ればスパムの大半は英語であり、図1に示すとおり、7月には5%前後、20通に1通のスパムが英語以外の言語のものだった。非英語国での比率を分析すると、それらの国での英語スパムの比率は英語国よりもかなり低い場合が多い。これはスパム業者がすべての国に英語のスパムを送っているのではなく、国を正しくターゲット化していることを示唆している。例えば、ドイツではすべてのスパムのうち46.5%がドイツ語であり、2.5%がフランス語となっている。オランダでは、25%がオランダ語、53%がフランス語、4%がドイツ語となっている。日本では62.3%が英語ではない東洋の言語であることが分かっており、中国ではこの数字は54.7%になる。
ローカライズが進んでいるという傾向は、McAfeeが2008年に実施したGlobal S.P.A.M Diaries実験でも確認されており(12ページ)、ここでも上記と同じ国がローカライズされたもっとも多くのスパムメッセージを受け取っているとして、ランキングの上位を占めている。
(関連記事についても参照して欲しい:スパムの送信量が再び増加中、Atrivo/Intercage’s disconnection briefly disrupts spam levels、2009年第1四半期のスパム送信量は、McColo遮断以前の水準に回復、Overall spam volume unaffected by 3FN/Pricewert’s ISP shutdown、Inside an affiliate spam program for pharmaceuticals)
自動翻訳サービスは使いやすく、無料であるという性質を持っているにもかかわらず、翻訳されたメッセージの品質が低く、そもそものスパム業者の努力を損なってしまう可能性があるため、その利用は減少しつつある。文化的な多様性を自動的に実現することはできないが、アンダーグラウンド市場に出回っている他のあらゆるものと同様に、このプロセスもサービスとして提供されている。
私が2008年10月から観察しているあるサービスは今でも活動を続けており、特定のサイバー犯罪促進コミュニティとの明白な協調関係を築いていることから、匿名性を気にしており品質を重視するスパム業者のデファクトの選択肢となっていると考えられる。このサービスでは、見込み客とのやりとりの記録を一切残していない。
読者はどう思うだろうか。スパム業者は今後もエンドユーザーのスパムのリンクをクリックしてしまうという古くからある習慣を利用するローカライズは行わず、マスマーケティング的アプローチを続け、3億5000万通のスパムメッセージにつき販売の成功は28回という結果に満足しているだろうか。それとも彼らはより大規模にプロフェッショナルな翻訳サービスを利用するようになるだろうか。
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ