日本オラクルが9月14日に発表した「Oracle Database 11g Release 2(R2)」の会見には、日本オラクル社長の遠藤隆雄氏が自ら出席した。
オラクルの代表製品である「Oracle Database」にとっては、2年ぶりの最新版。その発表であれば、社長が会見に臨むのは当然のことではあるが、遠藤社長は「自信を持って送り込む製品」とする一方で、「原点回帰、基本に忠実に取り組むことを、この製品では留意した」とも語る。
「社長が自ら会見に出て、しっかりと意図を説明する。ここにも原点回帰の姿勢がある」と語りながら、「居ても役には立たないんだけど」と遠藤社長流のジョークを付け加える。
遠藤氏は会見のなかで、「オラクル製品の価値が顧客に伝わっていない。市場にこのメッセージが伝わっていないことは残念。正しく価値を伝えることに努めてきたが、これをもう一歩進めなくてはならない」と自戒した。
この背景には、Oracle 8や同8i、Oracle 9iといった既存製品からの移行が必ずしも思惑通りには進んでいないことがある。
日本オラクル常務執行役員、システム事業統括本部長の三澤智光氏は、「Oracle Database 11gの出荷比率は45〜50%。順調に新製品への切り替えが進んでいる」と前置きするものの、「2000年問題を前後してOracle Databaseを導入したユーザーは、それから10年近くを経過しようとしている。さすがに新たなビジネスを支えきれなくなってきている。ここにOracle Database 11g R2の役割がある」とする。
遠藤社長が「原点回帰」とする理由には、こうした既存のOracle Databaseユーザーに、最新の11g R2への置き換えを進めてもらうためには、「データベースの価値は何か」ということを改めてユーザーに訴求するという、根本的提案が必要だと認識していることがある。
「企業システムの根幹となるのはデータベースであることは今も昔も変わらない。20年前、30年前、私自身、どんな営業の仕方をしてきたか。それを思い返している。いまこそ、そこに立ち返って考えるべき」(遠藤社長)
Oracle Database 11g R2では、「Lowering IT Costs」を開発テーマとする一方、「データベース」から「データベースインフラストラクチャ」への進化を標ぼうした。これらはコスト要求が厳しい現在の状況を反映したものであり、クラウド時代に求められる新たなデータベースの要件を追求したものだといえる。
だがその一方で、「最新の技術を届けると同時に既存資産を守り続けるのも最大のバリューとなる」と説明。さらに.NETとの親和性が高いことなどにも言及し、既存データベースからの置き換え促進を提案した。
そして、「R2こそが、11gの本命」としたのも、「我々としては、初期リリースの完成度にも自信はあるが、最初のリリースは問題が多いという先入観が日本のユーザーにはある。R2になったことで、心のバリアが取れる。その点で、R2は本命といえる」というのが理由。これまで移行に二の足を踏んでいたユーザーを取り込むチャンスを伺う。
事前の取り組みにも余念がなかった。
2009年5月からR2のベータプログラムを開始。これまでは開発完了後に提供していた製品を、開発中段階から最新版として提供し、これをリアルタイムに製品版に反映するといったことを初めて行った。そして、ここでは、単に新機能の確認だけでなく、パートナーのシステム提案において即時に有効となる検証を実施。既存システムからの移行を前提とした検証を優先したともいえる。
こうしてみると、日本オラクルがOracle Database 11g R2にかける姿勢は、まるでOracle 8やOracle 9iからの移行をターゲットとする、第三者ベンダーのようですらある。