たかが釣り、されど釣り--コモディティ化はエクスペリエンスへ進む

飯田哲夫(電通国際情報サービス)

2009-09-28 12:00

 グリーとディー・エヌ・エー(DeNA)が、モバイル釣りゲームの著作権で争っている。グリーはDeNAに対して、配信の差し止めと損害賠償金3億8385万円を求めているという。「たかが釣り」ゲームでと思うかもしれないが、「されど釣り」なのである。

 釣り好きでないと分からないとは思うのだが、それは海や川などの釣り場の選択に始まり、対象とする魚やサイズ、それに対応した仕掛け、エサなど、そのバリエーションの全貌は計り知れない広がりを持つ。一度釣具店に足を踏み入れると、竿、仕掛け、針などが、対象とする魚によって細かく分類され、一つ一つのパーツは非常に小さいことに気がつくであろう。しかもマニアは、これを自作し始める懲りようである。そして釣果には経験値がものを言うので、そこらのロールプレイングゲームよりも奥が深いのだ。

 そして、この全貌とまではいかないものの、その主要な要素(釣り場、魚種、仕掛け、経験値など)をゲームに盛り込んだモバイル釣りゲームは、単なるゲームではなく、体験型のエンターテインメントとなる。そう、釣りは単に魚を獲得することではなく、対象魚種の選定から始まって、釣りそのもの、そしてその後の調理に至るまでのエクスペリエンス型のレジャーであるため、その悦びは体に染み込むのである。なので、釣れないくせに通い続けることとなる。

 さて、何が言いたいのかというと、グリーとDeNAが真剣に釣りゲームで争っている事実は、モバイルゲームの世界も単なる商品としてゲームを提供する段階から、よりエクスペリエンス型のエンターテインメントで競う段階に成熟しつつあるのではないだろうか。商材のコモディティ化は、商品に始まり、サービスへ、そしてエクスペリエンスへと進む。商品なら真似もしやすいが、エクスペリエンスは真似が難しい。

 それでも今回の訴訟が起きたということは、それでも類似したエクスペリエンスの提供が可能であったということだ。まぁ、絶対真似できないのは、本当の釣りですからね。

筆者紹介

飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。
※この連載に関するご意見、ご感想は zblog_iida@japan.cnet.com までお寄せ下さい。

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