「ソフトウェア+サービス」はさらに進化する
Windows 7の発売が間近となった今、すでにWindows 7以降のOSについての憶測も出てきているが、今後のOSの方向性はどうなっていくのだろうか。
Huston氏は、これまでのMicrosoftの歴史を振り返り、「例えば15年前のわれわれのソフトウェアは、すべてがオフラインで利用するものばかりだった。当時はオフラインでコンピューティングすることが当たり前だったからだ。それが今では、ほとんどのPCがインターネットにつながるようになり、インターネットサービスがより現実味をおびてきた。オフラインで使っていたものが、オンラインサービスで補完されるようになってきたのだ」と話す。
「Windows XP SP2で自動アップデートを開始したのがMicrosoftにとってのオンラインサービスの本格的な始まりだ。PCが自動的にクラウドに接続し、OSを更新するようになった。自動更新でウイルスからユーザーを守るため、Microsoftでは自動アップデート用のデータセンターも用意した。また、Office製品もウェブ上で使えるようになったし、世界中にいる3000万人のXboxユーザーのうち3分の2はオンラインでゲームを楽しんでいる」(Huston氏)
Windows 7が軽いOSになったのも、「ソフトウェアの一部をクラウド化できたためだ」とHuston氏。Microsoftが推進する「ソフトウェア+サービス」のビジョンでも、「オフラインのソフトウェアとオンラインのサービスが補完し合うことを想定しており、Windows OSもリリースを重ねるごとにインターネット接続を前提に考えるようになった。オンラインサービスの占める部分は確実に大きくなりつつある」とHuston氏は説明する。
しかしHuston氏は、「すべてがクラウドに移行するとは思わない」と述べる。Microsoftが提供するサービスの中にもクラウドだからこそできるサービスがあることは同氏も認めつつ、「それでもすべてのPC体験を得るためにはオフラインを排除するわけにはいかない。それに、いくらブロードバンド化が進み接続性が良くなったとはいえ、ローカルマシンの能力を使って動かした方がパフォーマンスがいいことも事実だ」と話す。
「PCそのもののパワーは大きい。その能力を使わず、インターネット接続だけに頼るのはマシンの無駄使いだ。それに、クラウドを推進している競合企業でさえ、クライアントソフトウェアを開発しようとしているではないか」(Huston氏)
ソフトウェア+サービスのビジョンを推進するMicrosoftでは、開発グループにも大きな変化が起こっているという。これまでソフトウェアの製品サイクルは通常約3年だったのが、オンラインでは常にアップデートが行われるためだ。そのため「Microsoftでも開発は2つのグループに分かれ、1つのグループはこれまで通り3年サイクルで、もう1つのグループは常にアップデートすることを念頭に開発している」とHuston氏は説明する。
こうした流れの中、「Windows 8やWindows 9と呼ばれるかどうかはわからないが、未来のOSはよりクラウドを考えたものになるだろう。携帯電話やテレビなどデジタルデバイスとの接続性も増し、デジタルライフスタイル全般とPCが統合されていくことになる」とHuston氏は述べた。