枝を隠すなら森、データを隠すなら「雲」?--NRIセキュアに聞くクラウドのセキュリティ

梅田正隆(ロビンソン)

2010-01-28 19:13

 前回(メリットを共有する「業界クラウド」の可能性--IBMに聞くプライベートクラウドの価値)は、企業にとってのプライベートクラウドの価値について考えた。今回はクラウドを使いたいと考えている企業が不安を感じていると思われる「セキュリティ」について見ていくことにしよう。

 NRIセキュアテクノロジーズ(NRIセキュア)が2009年11月に発表した「企業における情報セキュリティ実態調査 2009」によると、クラウドコンピューティングに対して期待していることの上位は、「システム構築コストや運用負荷の削減」や「保有リソースの削減」などであったという。逆に、不安に感じることの上位は、「問題発生時のクラウド事業者の対応」や「自社の事業継続性について」だった(下図参照)。

企業のクラウドサービスに対する期待と不安 企業のクラウドサービスに対する期待と不安(出典:NRIセキュアテクノロジーズ、情報セキュリティレポート「企業における情報セキュリティ実態調査2009」)

 また、「第三者に情報を見られてしまうのではないか」「事業者側でどのような情報セキュリティ対策が実施されているのか分からない」という不安を、4割近い企業が感じていると報告した。

企業のクラウドサービスへの理解はこれから

 「企業がクラウドサービスをきちんと理解していれば、自社の基準に適合するかしないか、十分か不十分かの議論になるはず。例えば、SLAについてであれば、クラウドサービスのSLAに明記されていないから分からないのか、SLAを実際に見ていないのか、あるいは、まだ情報を集めておらず判断していないという可能性も高い」

 そう指摘するのは、NRIセキュア、サイバーセキュリティラボの上級研究員である佐藤健氏だ。同社は、野村総合研究所の情報セキュリティスペシャリストで構成されたセキュリティ専門会社である。佐藤氏は、多くの企業は今、不安の段階から情報を集め判断し、コンセンサスを取っていく段階にあるのではないかと見る。

 前出のレポートの中で意外に感じたのは、「公的ガイドラインへの準拠あるいは情報セキュリティ監査の観点から、クラウドの利用は容認されるか」という点で不安を感じている企業が少なかったことだ。クラウドサービスの利用に関する基準、評価指標等は確立されているのだろうか。

 この点について、同社テクニカルコンサルティング部セキュリティコンサルタントである篠崎将和氏は「法律家や監査法人、データセンター事業者ならびにセキュリティ有識者等の間で議論されているところだが、仮に今、クラウドのガイドラインをつくったとしても、現行法やガイドラインとの兼ね合いにおいて、いろいろと問題が出てくるだろうと言われている」と説明する。

 そもそも、ASP(Application Service Provider)というビジネス形態においても同様の問題は存在していた。ただ、クラウドはASPと比較して、技術的にもビジネスモデル的にも伸縮性があるため、世の中に与える影響度は大きい。篠崎氏は、ASPではそれほど顕在化してこなかった問題について、クラウドへの関心が高まる昨今、再度考えなければならない段階へきたと見ている。

クラウドサービス利用上の懸念点 クラウドサービス利用上の懸念点(経済産業省の資料を基に作成)

仮想化という技術に不安はないか

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

関連記事

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  2. ビジネスアプリケーション

    新規アポ率が従来の20倍になった、中小企業のDX奮闘記--ツール活用と効率化がカギ

  3. セキュリティ

    AIサイバー攻撃の増加でフォーティネットが提言、高いセキュリティ意識を実現するトレーニングの重要性

  4. セキュリティ

    「どこから手を付ければよいかわからない」が約半数--セキュリティ運用の自動化導入に向けた実践ガイド

  5. ビジネスアプリケーション

    改めて知っておきたい、生成AI活用が期待される業務と3つのリスク

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]