Microsoftは米国時間2月1日をもって、「Windows Azure」でアプリケーションを開発・運用する顧客に課金を開始した。正式にクラウドコンピューティング市場へ参入となる。
(アップデート:MicrosoftのAzureチームは米国時間2月1日付けで、「顧客やパートナーが無料期間の1月分の利用に対して誤って課金されることがないよう、Windows Azureと『SQL Azure』への課金はGMT(グリニッジ標準時)の2月2日午前12時に開始する」と発表している)。
Microsoftは3年以上前からAzureを開発しており、ベータテスターは1年以上前からAzureを試用している。MicrosoftはAzureで、ユーティリティという形式の中でWindowsエコシステムを再構築することを狙う。現在、開発者や顧客はWindows Azure OS上で開発と運用が可能で、データベースホスティングのSQL Azureを利用できる。数カ月後には、開発者にWebサービスユーティリティの「Azure AppFabric」が提供される。そして、Azureを補完するオンプレミスの“プライベートクラウド”技術も、2010年内に開発者と顧客に提供されることになっている。
(読者を含め)多くの人がAzureをMicrosoftの「クラウド」と表現しているが、Microsoftは実際のところ、さまざまなパブリックおよびプライベートクラウドを持つ。現在AzureでホスティングされているMicrosoftのサービスは、ほんの一握りに過ぎない。この中には、「Live Mesh」や「HealthVault」、エネルギーモニタリング「Hohm」などがある。「Windows Hotmail」「Xbox Live」などのメガ級のサービスはAzureベースではないし、「Exchange Online」「SharePoint Online」「CRM Online」「Business Productivity Online Suite(BPOS)」「Danger」もしかりだ。Microsoftは(可能性のある、なしを含め)いつこれらのサービスをAzureに移行するのか、具体的な時期について明らかにしていない。
Microsoftは「多数の」アプリケーションやサービスがAzure上で動いていると述べているが、これには趣味で作ったパイロット・アプリケーションからフル機能を持つ商用アプリケーションまでさまざまなものが含まれている。
Azureは商用サービスに切り替わったわけだが、Azureは本格的な時代に向けて準備ができているのだろうか?
クラウド専門家で「Cloud Computing with the Windows Azure Platform」を執筆したRoger Jennings氏は「イエス」と述べる。Jennings氏は、「Windows Azure Table Sample Project」を立ち上げており、ほとんどで100%のアップタイムを維持しているという。
「SQL Azure Databaseの機能と性能に満足しているし、George Huey氏の『SQL Server Migration Wizard』やSync Framework Teamの『SQL Azure Data Sync』などの無償のサポート機能も気に入っている。SQL Server Migration WizardとSQL Azure Data Syncは、オンプレミスのSQL ServerデータベースからクラウドのSQL Azureにスキーマとデータをエクスポートするものだ」(Jennings氏)。
Directions on Microsoftのアナリスト、Rob Sanfilippo氏によると、Azureの初期ユーザーの多くは、“Cloudbursting”にAzureを利用しているという。これは、Azure経由でMicrosoftのデータセンターが提供するオーバーフローキャパシティをオンプレミスに追加することで、インフラに常置の投資をすることなくピーク時の需要に対応する、というものだ。
Azureはまだ「未熟なプラットフォーム」と述べるSanfilippo氏は、「拡張性、安定性、セキュリティの実証には、大規模な実装と時間を要するだろう」と見る。Microsoftは、Amazonが提供しているような管理者向けの「Windows Server」仮想マシン管理機能を提供していないが、2010年後半の次期「Virtual Machineロール」機能とともに提供する予定だ。レポートや分析などのSQL Serverの高度な機能もSQL Azureでは利用できず(これも将来提供予定となっている)、以前約束していた「Workflow」と「Live Services」コンポーネントの提供も遅れている。オンライン管理ツールを増やし、Microsoftのオンプレミス製品と同等に近づけること(Microsoftはこれも約束している)でも改善できるだろう。
Jennings氏が指摘しているように、開発者向けには、既存のアプリケーションをAzureに移行するマイグレーションツールをはじめ、スクラッチから新しいアプリケーションを開発できるものなど、さまざまなツールが提供されている。Microsoftはまた、さまざまなパートナーと協業し、EclipseからPHPまで、Azure向けオープンソースツールの開発も進めている。「Silverlight」もSQL Azureクライアント向けに利用できるが、「ほとんどのWindow Azure開発者は当面はASP.NETを使い、『Visual Studio 2010』でMVCに移行し、2011年に入ってSilverlightを利用するだろう」とJennings氏は見ている。
クラウドでは、Amazon、Google、Salesforce、IBMなどと対抗することになる。開発者は、(現在のAzureのようなフル機能のOS中心インフラではなく)ローエンドのホスティング中心の価格を提供することを求めており、価格でもプレッシャーに直面している。Microsoftはまだ、社内にデータを保持したい顧客向けにパブリッククラウドのAzure環境をミラーする具体的な計画(どのように実現するのか、提供時期はいつか)を明確にしていない(Microsoftは、このような機能を提供すると述べている)。また、リセラーがAzureを提供するにあたって水面下の作業もまだ残っている。
Microsoftは、開発者と顧客がクラウドで多くのことをすると期待している。開発者がオンプレミスで、クラウドで、あるいはその両方で動くアプリケーションを書くにあたり、(主として)使い慣れた運用環境、ミドルウェア、開発インフラを使いたがっていると確信している。ついにAzureの課金が始まり、正式提供に入った。Microsoftの予想が正しいかどうかは、そのうちわかるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ