シマンテックは2月5日、事業戦略説明会を開催した。同社 代表取締役社長の加賀山進氏は、過去にはシステムを保護することが重要視されていたが、今では情報を保護することが大切だとして、「情報の可用性を確保し、情報の安全性を守る。そして情報のコンプライアンスを保つという3つのすべての階層でソリューションを提供する」と述べた。
この方針を軸に、シマンテックでは4つの事業戦略を立てている。それは、コンシューマーとエンタープライズの両市場においてセキュリティ分野でのリーダーシップを強化すること、バックアップやリカバリをはじめとする次世代情報マネジメントへの移行においてもリーダーシップを強固なものにすること、SaaSビジネスを拡張すること、そしてインフラをコモディティ化することで異機種混在環境を簡素化し、コスト削減に結びつけることだ。
これらの事業戦略を実現するために、シマンテックでは「販売体制、パートナー支援施策、製品サポート体制を強化する」と加賀山氏は言う。
2月2日に発表した富士通とのグローバルにおける協業も、販売体制の強化の一環だ。シマンテックがグローバルにおいて戦略的な協業を行う「グローバルストラテジックパートナー」としては、IBMやHewlett-Packard、Dell、Accenture、VMwareなど12社のグローバル企業が名を連ねていたが、ここに日本企業として初めて富士通が加わった。このパートナーシップでは、富士通のストレージやサーバにシマンテックのソリューションを組み合わせた製品をグローバルで展開することはもちろん、「両社の強みを生かした製品を共同開発することも視野に入れている」(加賀山氏)という。
シマンテックではビジネスソリューションも強化し、同社の新年度にあたる4月からはエンタープライズ担当の営業を産業別に再編するという。加賀山氏は、「パートナーは産業別に営業を配置しているケースがほとんどで、パートナーとの仕事のやりやすさを考えてわれわれも産業別にする必要がある」と説明、営業担当者を約20%増員した上で、金融、製造、テレコム、流通、公共の5つの産業にわけて再編するとした。
パートナーについては、プログラムの充実や得意分野に的を絞った「スペシャライゼーション」を推進するなどして支援を強化する。特に、2009年12月に開始したSMBスペシャライゼーションは、「2010年3月末までに20社のパートナーにサインアップしてもらうよう目標を定めていたが、すでに12月末の段階で22社がサインアップしたため目標を上方修正し、今年3月末には50社、2011年3月末までに100社に参加してもらいたい」と加賀山氏。今後はDLP、アーカイブ、データ保護といったソリューション別にもスペシャライゼーションを増やしていくという。
製品サポートにおいては、ハードウェア認証や技術検証、修正プログラムの作成などを担当する「Japan Engineering Center」と、日本向けのローカライゼーションやローカルコンテンツの開発、サポート、品質保証などを行う「Japan Development Center」という2つの国内開発部隊を置く。「外資系ソフトウェアベンダーで国内に開発部隊を置く企業は少ないが、日本の顧客は製品の使用形態が複雑なほか、品質には非常に厳しいという特徴がある。市場の要求度が違うため、このような開発部隊が国内に必要だった」と加賀山氏は説明、日本に開発リソースを割くことの大切さを強調した。
こうした戦略により、「顧客満足度、パートナー満足度、社員満足度のすべてにおいてナンバーワンのソフトウェアベンダーを目指す」と加賀山氏は述べた。