「フットワーク軽いITベンチャーと頑張りたい」--MSベンチャー支援はAzureでも

岩本有平(編集部)

2010-02-08 21:03

 マイクロソフトは2月8日、同社が手掛けるITベンチャー支援制度に関する説明会を開催。同社が企業市民活動の一環として取り組む各制度や参加企業の声を紹介した。

 マイクロソフトでは、ITベンチャーを支援する複数のプログラムを用意しているが、その先駆けとなったのは2003年に開始した「ITベンチャー支援プログラム」だ。これは、地方自治体と協力し、地方のITベンチャーを支援するというもの。これまでに20の自治体と組んでプログラムを提供してきた。

 また2007年からは、マイクロソフトのテクノロジーを利用した優れたソリューションを持つITベンチャーを表彰する「Microsoft Innovation Award」も開催している。このアワードは、技術者向けイベント「Microsoft Tech・Ed Japan」の来場者とマイクロソフト社員による投票で優秀企業を選び、グローバル展開までの技術支援やマーケティング支援をしている。このほかマイクロソフトでは、起業3年未満のスタートアップ企業に対してソフトウェアや技術情報を提供する「Microsoft BizSpark」なども展開している。

ワンビ代表取締役の加藤貴氏 ワンビ代表取締役の加藤貴氏

 「Innovation Awardでの受賞後、問い合わせが増え、サイトへのアクセスは5倍以上になった」――こう語るのは、Innovation Award 2009最優秀賞を受賞したワンビ代表取締役の加藤貴氏だ。

 同社は、PC内のデータを遠隔消去するサービス「トラストデリート」を提供するベンチャーだ。トラストデリートはウイルス対策や暗号化で情報流出を予防するのではなく、PCの盗難・紛失の際などにデータを消去する事後対策型のセキュリティソリューション。2006年にパッケージ版の製品を販売し、その後ASP版や自社サーバで運用するエンタープライズ版などを提供している。

 加藤氏は、Innovation Award最優秀賞受賞を振り返り、「ベンチャーに一番足りないのはブランド力。技術は大手に追いついても、ブランド力が足らない。マイクロソフトを通じて自社のサービスを告知してもらうことに期待したが、受賞で注目を浴び、多くの問い合わせに至った」と語った。

ステップワイズ代表取締役の長谷川誠氏 ステップワイズ代表取締役の長谷川誠氏

 また、2008年のITベンチャー支援プログラム採択企業であり、販売管理システム「Venta」を開発するステップワイズ代表取締役の長谷川誠氏は、「(創業間もなく)5人分の開発ツールを買うお金がなく、ツールを使いたいという軽い気持ちから応募した。ツールや技術の提供もあったが、一番大きかったメリットはマイクロソフトのウェブサイトやプレス向けにPRできたこと」と語る。

 また、マイクロソフトが支援している企業であるということが顧客の信頼感にもつながったという。「支援プログラムから1年2年とたったが、営業をかけていない企業から商談が来たり、マイクロソフト経由での問い合わせが来たりした。その結果、2期連続の黒字化も達成した」(長谷川氏)

 マイクロソフトデベロッパー&プラットフォーム統括本部の長井伸明氏は、こうしたITベンチャー支援の意義について、「マイクロソフトでは、“新しいテクノロジー”を市場に広めていくところに非常に大きな投資をする。その際に、フットワークの軽いITベンチャーにこそ一緒に頑張ってもらいたいと考えている」とも語る。

マイクロソフトデベロッパー&プラットフォーム統括本部の長井伸明氏 マイクロソフトデベロッパー&プラットフォーム統括本部の長井伸明氏

 長井氏の言う“新しいテクノロジー”の1つに、先日正式提供を開始したばかりのクラウドサービス「Windows Azure」がある。ワンビ、ステップワイズの2社も、Azureに対応したソリューションを開発している。

 トラストデリートでは、Windows 7 Ultimateのセキュリティ機能「BitLocker」と連動する機能を備えるほか、Windows デスクトップ サーチを使った日付指定のファイル削除機能「インテリジェント消去」などを備える。こうした機能を利用するためにもWindows Serverが必要となる。しかし自社でサーバを構築・管理したくないという顧客のニーズがあったことから、Azureに対応した。「Azure対応は実質1週間程度。これがウィルコムとの提携などビジネスでの引き合いにもつながった」(加藤氏)

 また、Azureに対応したことで、グローバルなビジネス展開の可能性も生まれたという。「これまでの課題は、“回線”が細かったこと。Azureに対応することで、米国や欧州、中国など世界のベンダーやSIerに提案していける」(加藤氏)

 また長谷川氏も、「これまではいわゆるLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)構成で自社に専用線を引いてサービスを提供してきたが、これでは導入までに500万〜600万円かかっていた。これがAzure上で展開できることで、専用線もハウジングも持たなくていい。人的コストも下がる」と語る。同社では、Ventaの既存顧客に対しても、Azure版への乗り換えを進めるとしている。

 Azureを利用したITベンチャーの製品群は、2月23〜24日に東京で開催されるイベント「Microsoft Tech・Days 2010」内で展示される。ワンビやステップワイズのほか、ジースポート、スカイフィッシュ、フィジオスの計5社が出展する予定だ。

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