電通国際情報サービス(ISID)は2月23日、医薬品の創薬バイオベンチャー企業であるエムズサイエンスに対し、企業間情報共有サービス「IntraLinks Exchanges」を販売したことを発表した。
IntraLinks Exchangesは、米IntraLinksが提供する、インターネット上で大量のドキュメントを安全かつ効率的に配信するクラウドサービスだ。米国公認会計士協会の監査基準書に基づく認証を受けたセキュリティレベルと機密情報管理機能を装備していることが特長だという。エムズサイエンスは、今回IntraLinks Exchangesを採用した理由として、グローバルにパートナーとのコミュニティを形成すること、また自社で研究開発した新薬候補物質に関する特許権やノウハウなどを他社に売却したり使用を許諾したりする新薬の「ライセンスアウト」業務において、機密情報の開示および管理を行う仕組みが必要だったことなどを挙げている。
近年、製薬業界の新薬開発は競争が激化し、製薬会社やバイオテクノロジー企業は新薬候補分子の特許権やノウハウなどの知的財産をライセンスアウトすることにより得た収益を研究開発に投資するなどして、新たな市場の拡大を目指している。そのため、ライセンシングのパートナー候補を国内に限定せず、海外も含めてより多くの買い手候補に迅速にアプローチする必要があるという。
ライセンスアウトでは、知財のデューデリジェンス(適性評価手続き)のために物理的な会議室としてデータルームを準備し、膨大な機密文書を運び込み、厳重に書類を管理する必要があったという。また、国内外の買い手候補の会社がデータルームに足を運び、追加資料が出るたびに個別に郵送やメールで資料を送付するなど、デューデリジェンスには多くの費用と時間を要したとしている。さらにこの方法では、厳格な情報へのアクセスコントロールや、アクセス履歴の管理を十分に実施することは難しく、セキュリティ上の不安を抱えていたともしている。
これに対し、IntraLinks Exchangesは物理的な会議室に代わり、インターネット上のセキュリティが確保された場所、いわゆるVDR(Virtual Data Room)を用意し、電子化された審査対象書類などのドキュメントを掲示することにより、世界中のパートナー企業候補が効率的かつ安全に資料を閲覧できるという。また、社外との文書共有におけるアクセス権限管理や証跡管理、IRM(Information Rights Management)機能により、ファイルの印刷、ダウンロード、スクリーンショットを禁止することが可能なため、情報の二次流出を防止できるとしている。
また、IntraLinks Exchangesを利用してデューデリジェンスのプロセス全体をオンラインに移行することで、複数の提携候補先によるデューデリジェンスを同時並行的に実施できるという。また、ファイルの一括ダウンロード、一括アップロードが可能で、ドキュメント配信が迅速化するという。さらには、直感的なインターフェースを用意し、100カ国語以上のグローバルカスタマーサポートを提供するなど、従来のデータルームによるデューデリジェンスと比較しても物理的および地理的な制限がなく、ライセンスアウトの意思決定プロセスの迅速化が可能だとしている。
ISIDは、これまで主に同一時期に同一条件で複数の金融機関が融資するシンジケートローン向けやM&A案件向けにIntraLinks Exchangesを提供してきた。同サービスはアウトソーシングサービスなどの受託業務に関する内部統制を評価するための米国公認会計士協会(AICPA)の監査基準書に基づく「SAS70 タイプ2」(日本の18号監査に相当)の認証を受けている。ユーザー認証、暗号化等による高いセキュリティレベルと、厳格な機密情報管理に対応できる機能が高く評価され、これまでメガバンクや大手証券会社に採用されているという。