SAPがこぎ出した「10億ユーザー」獲得目指す大航海
12sprintsには、意思決定を行う業務としての機能、仕組みが埋め込まれている。いわば、会議において一連の意思決定のプロセスをサポートする多様なサービスを提供する共通基盤と言える。なぜSAPがこの基盤を作る必要があったのか。
馬場氏は「様々なサービスを呼び出せる、と口で言ってもなかなか伝わらない。そこで完成品である12sprintsをつくり、本来訴求したかった基幹システムから提供されるサービスの柔軟性や使いやすさを、SAP自身で演出することにした。この目的を達成できたとき、12sprintsの最初の役目も終えることができるだろう。我々はコミュニケーションの領域で儲けることは考えない」と話す。
SAPは今年1月のIRにおいて、2014年までに「SAPのユーザー数を10億人にする」ことを目指すと発表した。現在のユーザー数は約4000万人だというから、にわかには信じられない数字だ。何しろ世界中のホワイトカラー全員をユーザーにするようなものだからだ。当然、従来のようにアプリケーションをコツコツ作っていても、とうてい追いつかない。
「そこでSAPでは、無料版で価値を体感していただきながら有償版のプレミアムサービスを提供するとか、インストール不要、アップグレード不要とか、あらゆるモバイルで動くなどの新しい時代に向けた製品開発ガイドラインを策定済みだ。このプリンシパルに基づいてつくった最初のアプリケーションが12sprintsだ」(馬場氏)
今後は12sprintsのような、ユーザーがすぐに効果を体感できる「インスタントバリュー」のある製品やサービスばかりが出てくるという。どんな製品が出てくるのか、これからのSAPを想像してみるのも面白い。