目標値の5倍速い! 爆速「arrowhead」を生み出した富士通の技術と発想のヒミツ

大河原克行 2010年04月05日 09時30分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 富士通が東京証券取引所に納入した株式売買システム「arrowhead(アローヘッド)」は、2010年1月4日の稼働以来、現在までの約3カ月間、トラブルなく運用されている。

 arrowheadは、注文応答時間や情報配信スピードの高速化を実現し、注文、約定、注文板などの取引情報を、異なるサーバ上で三重化して処理するなど、高速性と信頼性を兼ね備えた「世界最高水準の取引所システム」と位置づけられているものだ。

 富士通では、arrowheadについて「金融テクノロジの高度化などを背景に、個人投資家のオンライン取引の普及や、証券会社や機関投資家によるアルゴリズム取引など、新たな取引が広がりをみせている。こうした市場環境や取引形態の変化のなかで、注文レスポンスや市場情報配信の高速化のニーズが高まっており、東京証券市場の国際的な市場競争力を強化するためにも、大規模なサーバシステム上で、高性能、高信頼なミッションクリティカルシステムを実現する必要があった。新たな先進技術や機能強化を組み入れたミドルウェアの採用など、富士通の総合力を結集して構築した」と説明する。

 中でも、arrowheadに求められていたのは「10ミリ秒」(1ミリ秒は1秒の1000分の1)の高速性だったという。株式売買の発注元から注文を受け、応答保証サーバで受付通知のキューを発行し、受付通知を発注元に戻すまでの目標時間とされていたのが「10ミリ秒」だったのだ。

 これに対して、富士通では1月の稼働時点で「5ミリ秒の注文応答時間を実現する」と発表。この時点で、目標の2倍以上のスピードだが、現在の実績は、なんと「2ミリ秒」。目標の5倍にあたるレベルでの高速稼働を実現しているという。この高速性はarrowheadの最大の特徴ともいえるものだ。

ミリ秒単位のレスポンスを支えるインメモリDBMS

 この高速性を支える基幹ソフトウェアが、インメモリデータの高速データ管理ミドルウェア「Primesoft Server」である。

橋詰保彦氏 富士通、プラットフォームソフトウェア事業本部、次世代社会基盤ミドルウェア開発統括部部長代理の橋詰保彦氏。

 「基幹IAサーバにはPRIMEQUESTを採用し、SANディスクアレイとしてETERNUSを採用している。だが、これらのハードウェアの仕様は特別なものでない。これだけの高速性を実現しているのは、Primesoft Serverによるところが大きい」と語るのは、富士通、プラットフォームソフトウェア事業本部、次世代社会基盤ミドルウェア開発統括部部長代理の橋詰保彦氏だ。

 Primesoft Serverでは、メモリ上に取引情報を配置することで、超高速データアクセスと、高いレスポンス性能、高スループットを実現している。「高速アクセスにおいて、ネックとなるのがI/O。ディスクアクセスをなくすことでI/Oのネックをなくし、メモリ上で高速アクセスするという、これまでの既存技術にとらわれない発想によって実現した」(橋詰氏)とする。

 ログ情報についてもインメモリ処理を行っており、これもPrimesoft Serverならではの特徴といえる。さらに、メモリ上に配置した取引情報を三重化。各データ処理の実行環境は、「アプリケーション層」「インスタンス層」「ノード層」の3層に切り分け、アクティブインスタンスの異常時には、わずか数秒で、スタンバイインスタンスに切り替えることができるという。

 「異常検知を含んで1.5秒程度での切り替えが可能。誤認なく異常を検知するという点で工夫を凝らしているのが、Primesoft Serverの特徴と言える」(橋詰氏)

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連キーワード
経営

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]