IDC Japanは4月14日、国内コンプライアンス市場規模予測を発表した。これによると、同市場の投資額規模は、2010年が前年比成長率17.3%増の1兆2139億円で、2014年には1兆9492億円へ拡大する見通しという。このうち、従業員数999人以下の中堅中小企業(SMB)市場の投資額規模については、2010年が前年比成長率17.8%増の2760億円で、2014年には4782億円へ拡大する見込みだという。
また、情報システムの「所有から利用へ」の流れが加速するにつれて、大企業ではグループ向けのシェアードサービス、中堅中小企業では経理、人事分野のビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)などで、クラウド環境を試験的に利用するケースが増えつつあるとしている。
上場企業の多くが2回目の内部統制報告書提出を迎える2010年、財務分野では、監査人から指摘された情報システムに係る不備事項の改善を進めると同時に、国際会計基準(IFRS)への対応を検討する動きが広がっているという。一方で、日本独自の商慣行や取引関係を前提とした基幹システムの扱いが、ITに係るコストの観点から問題となっているとしている。IDC Japanは、財務以外の分野で、大規模リコールや製品回収、改正労働基準法、改正省エネルギー法、 東京都の総量削減義務や排出量取引制度など、ICT産業を含む国内産業界に対し、いっそう厳格な法令遵守を求める動きが表面化している点を指摘。このような背景を考慮して、2011年以降も、財務および非財務分野のコンプライアンス対策におけるICT利活用への需要が拡大すると予測している。
また、国際会計基準(IFRS)の適用を直接受けない非上場のSMBの場合、法人税法の確定決算主義に準拠した会計処理を行うのが一般的だが、リース会計、デリバティブやヘッジ会計、外貨建取引会計、上場株式の評価損、棚卸資産の評価損など、さまざまな会計基準の改正の影響が法人税制に及ぶことが見込まれるという。これらのことからIDC Japanでは、今後のSMB市場においては、限られたリソースの中で、事業や取引の適正化をコンプライアンス管理の視点から効率的に支援すると同時に、経済危機脱却のための緊急施策から「新たな需要を創出する攻めの施策」への移行を促進するICT利活用が求められるとみている。
IDC Japan、ITスペンディングリサーチマネージャーの笹原英司氏は「ユーザー企業の情報システム部門は、統合的リスク管理の観点から、業務部門や法務専門家と連携して、事前の技術評価、SLA締結、事業継続管理と災害対策計画策定など、クラウド環境のITガバナンスに係る外部委託管理で要求される予防的対策の標準化に向けた施策を推進すべきだ」と指摘している。