マイクロソフトが「Office 2010」の出来栄えに自信満々な理由 - (page 2)

大河原克行

2010-05-17 10:54

 他のOffice 2010における強化ポイントのうち見逃せないのが、サーバ製品である「SharePoint」や、「SharePoint Workspace」(旧Groove)などとの連携機能だ。これらの製品を使って、例えば「Word 2010」のデータを共同で編集する場合には、文書の段落ごとに排他制御をかけて、同時に1つのファイルを編集することが可能になる。従来であれば、誰かが使用しているファイルについてはファイル全体にロックがかかっていた。そのため、ファイルが開けなかったり、コピーとして保存し直したファイルを編集してしまうために同名のファイルが複数でき、管理に手間がかかった。Word 2010をSharePointと組み合わせて使うことで、1つのファイルを複数人で編集する場合、誰かが編集している段落は、その部分だけにロックがかかり、それ以外の段落では自由に作業が行えるようになっている。また、作業中の他のメンバーに対して、インスタントメッセージを送信することも可能だ。

 また、メールクライアントである「Outlook 2010」についても、不要なメールをクリーンアップし、より効率的に電子メールを閲覧できるようにする機能を提供するという。Berger氏によると、インフォメーションワーカーの年間平均給与は7万5000ドル。そのうち、電子メールの処理時間に企業が支払っている費用は2万ドルに達するという。

 「Outlook 2010の機能を利用することで、電子メールの処理時間を10%削減できる。つまり、それだけで1人あたり年間2000ドルのコスト削減が可能になる」(Berger氏)

 ちなみにOffice 2010の利用にあたって必要となるシステム要件は、前バージョンのOffice 2007と同じに設定されている。これは同社が新バージョンのOffice製品を投入するにあたって初めてのことだ。ここでも、ハードウェア強化のための新たなコストが発生しないというメリットがあるという。

 このように、さまざまな点でマイクロソフトが工夫を凝らして完成させた「Office 2010」だが、ユーザーの関心も高いようだ。2009年11月から実施されている「Office 2010パブリックベータプログラム」においては、日本から40万人のユーザーがベータ版のダウンロードを行ったという。Office 2007における同様のプログラムでは17万人だったというから、単純に2倍以上の数になる。

 Office 2010のベータ版は、同社のアプリケーション仮想化技術である「App-V」での利用を想定して作られている。「Click-to-Run」とも呼ばれるこの技術により、アプリケーションの大部分は利用時にサーバから配信され、クライアントPC内にキャッシュされる。そのため、インストールから使い始められるようになるまでの時間は数分とかからない。さらに、Outlookなどの一部アプリを除いては、旧バージョンとの共存も可能になっている。App-Vは本来、アプリケーションの大規模展開と管理を容易にするための技術だが、Office 2010を検討しているユーザーに対しては「試用しやすい環境」を提供する技術として利用されていることになる。

 ボリュームライセンスユーザーに対しては既に製品版の提供が開始されているOffice 2010だが、パッケージ版が発売される6月17日を前に、新Officeの内容が気になっている人は、ぜひベータ版でマイクロソフトの言う「使いやすさ」の向上がどれほどか試してみてはどうだろうか。

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