IBMが2010年に世界のCEOを対象として行った調査によれば、日本のCEO(経営者)の約41%が自社の経営に最も影響を与える外部要因として「グローバル化」を挙げたという。この数値は他の地域と比較しても顕著に高く、激しく変化する経済環境の中で生き残りを図るにあたって、日本の経営者がグローバル展開を強く意識している様子が伺える。
日本においては、中国をはじめとしたアジア新興国の経済面での躍進が、今後のビジネス拡大のカギになるという見方も強い。こうしたグローバル市場での需要拡大に対応し、競争力を高めるために、海外での拠点拡充を急ぐ企業も多い。今回のユーザーである三菱重工業(三菱重工)の汎用機・特車事業本部(汎特事業本部)でも、2009年にタイおよび中国の大連にそれぞれ新工場を設立し、稼働を開始している。
三菱重工の汎特事業本部は、エンジン、ターボチャージャ、産業車両、特殊車両などの製造、販売を行う部門。同事業本部の売上は、三菱重工全体の10%以上を占める。中でも、特に「ターボチャージャ」と「フォークリフト」は、事業本部の総連結売上の5割以上を占める主力製品となっている。
汎特事業本部では、世界的な排ガス規制の本格化とエンジンのダウンサイジングに伴い、ターボチャージャの需要が大幅に増加すると予測しており、これに対応するべく、2009年夏、部品サプライヤーが多数存在するタイに新工場を設立した。これに続いて、同年冬には、エンジン式フォークリフトについて世界最大の市場へと成長を遂げている中国において、為替リスクの回避やコスト競争力の向上を図りつつ需要に応えていくため、大連にフォークリフト製造を行う新工場を設立した。
この2カ所の新工場では、工場運用の仕組みを短期間かつ低コストで確立する必要があった。また、それぞれの工場で生産に関するデータを一元的に管理することで、業務効率を上げ、意思決定のスピードを向上したいというニーズもあった。そのため、導入が迅速に行えるERPパッケージ製品の導入を検討し、最終的にIBM System iプラットフォーム上で稼働する日本インフォア・グローバル・ソリューションズ(インフォア)のERPパッケージ「Infor ERP LX」の導入を決定した。
Infor ERP LXは、SSA Globalによって開発されていた製造業向けERPパッケージであり、旧称で「BPCS(Business Planning and Control System)」と呼ばれていた製品。2006年の買収により、現在は新名称でインフォアより提供されている。
Infor ERP LXの採用にあたっては、既にオランダや北米の子会社など、4カ所の海外拠点でのBPCS導入実績があった点が大きな要因という。また、大連工場においては、「中国の商慣習への対応が行われている点も重要なポイントだった」(三菱重工、汎用機・特車事業本部 生産管理部生産企画課主任の渡部一文氏)とする。
あわせて、Infor ERP LXが主に製造業向けのERPであったという点も採用の大きな要因だ。タイ工場への導入を担当した、Mitsubishi Turbocharger Asia(MTA)、Production Control Departmentゼネラルマネージャーの岸谷浩氏は、「採用にあたっては他のERPパッケージとも比較したが、他製品が会計系の機能を重視しているのに比べ、製造系の機能についてはInfor ERP LXが詳細で、システムの全容が理解しやすかった」と語る。