記事によれば、IT関連企業は、そもそもソフトウェアのように環境へのインパクトが少ない商品を作っていることに加え、市場からのプレッシャーからより消費電力や熱効率の良い機器の開発に力を注いでいることが評価されているようだ。
ITは、あらゆるものをネットワークで接続し、その処理速度を上げていくことで、われわれの時間を凝縮してきた。そしてその代償として、データセンターは大量の電力を消費し、熱を発生させてきた。
そして、それが地球環境の破壊につながるとすれば、それは単に処理速度が速いということではなく、実際問題としてわれわれの時間、つまりは地球を維持できる時間をより凝縮させていることにほかならない。
Newsweek誌のランキングが示していることは、時間の凝縮に精を出してきたIT企業が、それを再び紐解いていく試みを真剣に行っていると取っていいだろう。「The Clock」が示しているように、仮にわれわれが時間の密度を高めたからといって、全体の時間まで凝縮してしまう必要はないのである。
でも凝縮もほどほどが一番
「The Clock」では時計の出てくるシーンが連続するが、そういうシーンは往々にして緊迫した場面であることが多い。つまり、映像作品としての「The Clock」は緊迫したシーンの集積であるとも言える。しかし、そんなシーンも15分も見ていると徐々にその緊張状態にも慣れて、どんなシーンが出てきてもあまり驚かなくなる。
われわれの生活もテクノロジーの力によってどんどん凝縮し、われわれ自身も緊張感の連続から、そうした状況に慣れて問題の本質が見えなくなってきている。少なくとも自分はしばしばそんな風に感じることがある。つまりは、凝縮の度合いもほどよいバランスが求められる。もしかすると「The Clock」のメッセージはそのあたりにあるのかもしれない。
「The Clock」は、11月13日までです。もしロンドンへ行かれる機会のある方は是非White Cubeに立ち寄ってみて下さい。
筆者紹介
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。