東日本大震災、復興の今--富士通アイソテック - (page 2)

大河原克行

2011-05-18 12:37

 BCM(事業継続管理:Business Continuity Management)では、島根富士通での新ライン構築に向けては、富士通アイソテックから5人の技術者を派遣することが定められていた。しかし、ガソリンの確保に限界があったこと、鉄道による移動が困難だったことに加えて、社員の自宅の被災状況を考慮する必要もあり、結果として派遣できた社員は1人だけだった。あとは島根富士通の社員と、PC事業を統括する本社パーソナルビジネス本部が協力して、新規ラインを立ち上げるしかなかった。

 富士通アイソテックでは、生産棟の1階でPCサーバを生産している。同フロアは電気が通じており、比較的被害が小さかったため復旧が早く進み、3月22日にはトライアル生産を開始。翌23日からはPCサーバの生産ラインを完全復旧させた。さらに、島根富士通でも、23日から2500台体制でデスクトップPCの生産を開始した。被災から12日目に生産が再開された格好だ。

島根富士通では急遽デスクトップPCの生産ラインを立ち上げ4月中旬まで生産した※クリックで拡大画像を表示 島根富士通では急遽デスクトップPCの生産ラインを立ち上げ4月中旬まで生産した※クリックで拡大画像を表示

 電気が止まり、被災後2日間に渡って内部の状況を確認できなかった2階のデスクトップPCの生産ラインは、3月24日からトライアル生産を開始し、28日からはディスプレイ一体型PCを中心に5つの生産ラインを稼働させた。この時点では、日産2500台の量産体制だったが、4月18日には島根富士通に移管した生産分を富士通アイソテックに戻して日産5000台体制とし、震災前と同じ生産規模にまで回復させることに成功した。

 富士通の特徴は国内生産にこだわってきたことだ。この体制が国内拠点同士の緊密で、迅速な連携を可能とし、島根富士通への生産移管と早期立ち上げにつながったといえる。富士通では、「一部のお客様に対しては納期の遅れがあったが、期末の需要集中期にもほぼ納期通りに納品できた」とする。

 今回の生産ラインの復旧において、国内生産にこだわる富士通の底力をみた感じがした。

取材時点でも天井に穴が空いている箇所はあちこちにみられた※クリックで拡大画像を表示 取材時点でも天井に穴が空いている箇所はあちこちにみられた※クリックで拡大画像を表示

“復旧”は完了、これから“復興”へ

 前回紹介したNECパーソナルプロダクツ米沢事業場と、今回の富士通アイソテック、両社の生産ラインは震災前の状況に回復したが、今後、懸念材料がないわけではない。

 例えば、被災した東北地方の企業のなかには、オプティカルドライブ関連の生産拠点や、高精細液晶パネルに使用される材料の生産拠点などがあり、部材調達に遅れが出て、安定した生産ラインの稼働が難しくなる可能性がある。

 また、輸出製品に関しては放射線量の測定といった要請が海外から出ており、生産拠点では余計な作業工数と事情説明が求められるといったことも起きている。風評被害の早期払拭は、東北地区の生産拠点にとって重要な課題だ。

 また、夏場に向けた節電プランの策定、生産量を落とさないまま輪番停電に対応するための生産シフトの変更、そして、余震が続くことによる従業員の不安定な気持ちをケアすることも必要だ。

 生産ラインの完全復旧は完了したが、本当の意味で、生産拠点が復興するにはまだ時間がかかるだろう。

JR福島駅の新幹線ホームでも「がんばれ福島!」をキャッチフレーズに福島の名産品を販売。復興に向け、様々な形の取り組みが進んでいる※クリックで拡大画像を表示 JR福島駅の新幹線ホームでも「がんばれ福島!」をキャッチフレーズに福島の名産品を販売。復興に向け、様々な形の取り組みが進んでいる※クリックで拡大画像を表示

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