日本オラクルが提供するSaaS型顧客情報管理システム(CRM)の最新版である「Oracle CRM On Demand R19」の提供が7月21日から始まった。価格は1ユーザーあたり月額8560円から。2003年にR1がリリースされ、年2~4回のバージョンアップを経て、この7月でR19となっている。
日本オラクルの山瀬浩明氏(アプリケーション事業統括本部CRM On Demand本部ソリューション部部長)は、現在のCRMのトレンドとして業務生産性の向上、顧客価値最大化、ビジネス変化の対応力という3点を挙げている。
業務生産性の向上では、モバイル端末の性能向上による業務のフリーロケーション化にいかに対応していくか、というものだ。つまりは、いつでもどこでもモバイル端末からCRM上のデータに素早くアクセスできることが問われているということでもある。
顧客価値最大化とは、顧客情報の質と鮮度を向上させると同時に、さまざまな視点や角度から洞察していくことが課題となる。すなわち「優良顧客を見つけて、いかに獲得するか」(山瀬氏)が問われることになる。この点でCRM On Demandでは以前からビジネスインテリジェンス(BI)機能を搭載しているという。BI機能で地域別や商品別などの軸から顧客を分析することができるとしている。ビジネス変化の対応力とは、システム基盤の柔軟性や拡張性が常に求められるということだ。
そうしたCRM On Demandの新版であるR19の特徴が(1)モバイル端末対応の強化、(2)営業とマーケティング機能の統合、(3)カスタマイズ機能の強化、(4)業種別ソリューションの強化――という4点だ。(1)が業務生産性の向上に、(2)が顧客価値最大化に、(3)がビジネス変化の対応力にそれぞれ対応することになる。
モバイル端末対応を強化
(1)のモバイル端末対応の強化では、まずはノートPCなどのOutlookから直接CRM On Demandにアクセスできる機能「CRM Desktop for Outlook」が挙げられる。OutlookからはCRM On Demand上の取引先や担当者、商談の状況、見込み顧客といったデータを参照するだけでなく、作成や更新もできるようになっている。それらのデータをOutlookのメールやスケジュールなどと連携することも可能だ。
これらの作業は、オンラインとオフラインという両方のモードに対応している。たとえばオンラインで取得した顧客のデータを、オフラインで更新した後でオンラインに上げるといったことも可能になる。山瀬氏によると、CRM Desktop for Outlookは「米国で先行販売されているが、大変人気がある」という。
CRM Desktop for Outlookが対応しているのはOutlook 2007/2010。今後はLotus Notes v 8.0/8.5を予定。Outlook 2003とLotus Notes v 7.0への対応は未定としている。
(1)では次に「Fusion Mobile Sales for CRM On Demand」がある。これはiPhoneやBlackBerryから直接CRM On Demandにアクセスできるという機能だ(Android端末への対応は今後の予定)。この機能は名称から分かるように、オラクルのCRMパッケージソフト、つまりオンプレミス型の「Siebel CRM」や「Oracle Fusion CRM」にも対応できるようになっている。
「たとえばエンドユーザー数百人でCRM On Demandを使っていた企業が、それよりも多くなったらオンプレミスのSiebel CRMに乗り換える時でも、この機能を活用できる。この機能は、SaaSでもオンプレミスでも対応でき、バックエンドシステムにとらわれない、ユーザーインターフェース(UI)を提供する」(山瀬氏)
モバイル端末対応の強化の点では、タブレット端末「iPad」からも直接CRM On Demandにアクセスできるようになっている。
iPadの魅力の一つに画面の大きさがある。iPadは個人向けというイメージがあるが、実際のところは企業の業務の現場として、つまり業務端末として活用されているのはあまり知られていない。紙のパンフレットを電子化して見せたり、分かりにくい情報を動画にして見せたり、といった使い方だ。CRM On DemandのiPad対応では、これらの活用を受けて「eDetaling」という機能も提供している。