Hewlett-Packard(HP)が米国時間8月18日の四半期決算発表の中で明らかにしたPC事業の分離とwebOSデバイス事業の終了に関する決定は、大きな波紋を呼んだ。
特に、HPがプレーヤーとしてトップの地位にあるPC事業からの撤退を決めた事実により、コモディティ化が進み、利益率が低水準にとどまり続けるPC事業を継続していくことの厳しさが浮き彫りになった。
HPでは、この2つの発表と同時にエンタープライズソフトウェア企業Autonomy Corporation(以下、オートノミー)の買収に取り組んでいることを明かした。エンドユーザー向けのハードウェア、デバイス事業を切り離し、エンタープライズソフトウェア企業を買収することで、より企業向けのソフトウェア製品やサービスを拡充していくという方向性を明確に示したのだ。
編註:HPは10月27日(米国時間)にPC事業の継続を、12月9日(同)にはwebOSのオープンソース化を発表している。
オートノミーとはどんな企業か
HPが白羽の矢を立てたオートノミーは、英ケンブリッジ大学を出自として1996年に設立された企業。「ベイズ推論」や「シャノンの情報理論」といった数学的な理論をバックボーンに、大量の情報の中から関連性のある情報や、重要な概念を抽出する、いわゆる「検索エンジン」と周辺のソフトウェアを提供している専業ベンダーだ。
2005年には、検索システム分野での競合だった米Verityを買収し、2009年にはコンテンツ管理システム(CMS)を手がけるInterwovenを傘下に収めた。企業や公共機関などのユーザーに対して自社製品を提供するとともに、400社を超えるOEMパートナーに技術提供を行っており、情報管理、分析、視覚化ソフトウェアの専業ベンダーの中でも存在感のあった1社である。
HPが、エンタープライズ事業への注力を示すにあたり、オートノミーの買収を進めるのは、近年のキーワードのひとつとなっている「ビッグデータ」への対応強化をうたうためと言える。
ビッグデータ登場の背景
5年ほど前、Googleの隆盛に端を発した「エンタープライズサーチ」のムーブメントでは、RDBMSに格納された構造化データ、ファイルサーバやオブジェクトDBに格納されたテキストや画像、動画などの非構造化データを統一されたフロントエンドから一元的に検索できるようにして、組織が情報を十分に活用し、生産性を上げることを目指した。
しかし、ほんの数年の間に、企業が情報を活用するために処理すべきデータの「量」は爆発的に増加し、処理に要求される「スピード」も極端に速くなった。