「有事の対応を平時の運用に組み込む」--オラクルが提案するBCPの勘所 - (page 2)

田中好伸 (編集部)

2011-08-24 18:35

 バックアップサイトは業務活用できないことから、BCPを発動するような事態が起きずに、実際に活用されることのないまま、寿命を全うするケースがほとんどという。複数のバックアップサイトも構築しづらいとも指摘されている。これは有事の際に単一障害点(Single Point of Failure:SPoF)となり得る。ストレージでのDRは、ソフトウェアでの実装と比較して、正副の切り替えのコストが高い、つまりダウンタイムの長期化という事態を招くといわれている。

 オラクルでは、より全体最適したDRを実現するため、具体的にはデータベース(DB)のトランザクション単位の認識、待機系の業務利用、通信量の削減、正副切り替え、運用の簡易化を実現するため、Oracle Databaseに高可用性技術を搭載してきた。その一例が「Oracle Data Guard」というデータ保護機能だ。

 Enterprise Editionに標準で搭載されているData Guardは、ネットワーク経由で同期あるいは非同期で、プライマリサイトからスタンバイサイトに複製を作るというものだ。Data Guardにはプライマリサイトからスタンバイサイトに切り替える「Switch Over」、反対にスタンバイサイトからプライマリサイトに切り替える「Switch Back」と呼ばれる機能が搭載されている。Switch OverとSwitch Backを活用することで、システムの定期メンテナンスやローリングアップグレード、有事に備えた対応としてのシステムの防災訓練が可能という。

 この機能を実行して「相互運用に慣れることで、実際の障害時に備えることができる」(谷川氏)。また谷川氏は、ビルメンテナンスに伴う計画停電に対して実際に行われている相互運用という方法を勧めている。つまり「バックアップサイトという“有事の対策”を“平時の運用”に組み込むことができる」(谷川氏)。

 バックアップでは、ストレージのミラーリングを活用するのが一般的だが、Data Guardを活用すれば帯域の狭い回線でも対応可能と、谷川氏はData Guardの優位性を強調する。ストレージのミラーリングに比べて「Data Guardは、ネットワークの帯域幅が7分の1、ネットワークのI/Oが27分の1になる」という。

 Enterprise Editionのオプション機能になるが「Oracle Active Data Guard」は、Data Guardの機能をより進め、スタンバイサイトのリソースを眠らせておくのではなく、バックアップや参照系のレポーティングなどの処理に活用できるようになっている。スタンバイサイトを利用して、オンライン状態でパッチを適用したり、アップグレードしたりといったことも可能だ。

 データ連携製品の「Oracle GoldenGate」も事業継続性の観点から有効な技術と谷川氏は説明する。GoldenGateは、Oracle DB間で片方向のデータ複製や双方向の同期、ログの高速転送などが実行できる。バージョンの異なるOSやDBの間でのバックアップサイトも構築することもできる。

セカンダリサイトは検証やテスト用途で活用

 オラクルのこうした一連の技術は、国内外の金融機関で活用されている。2010年1月から株式売買システム「arrowhead」を運用している東京証券取引所はセカンダリサイトを構築。プライマリサイトとセカンダリサイトはData Guardでネットワーク経由で同期している。このセカンダリサイトは普段、検証やテストといった用途で活用されている。谷川氏の言う“有事の対応を平時に組み込む”の実際例だ。

 東証の場合、既存システムに追加する形でセカンダリサイトを構築したといい、ストレージのコスト削減とネットワークへの負荷抑制を同時に実現したと説明している。東証のセカンダリサイト構築では、日本オラクルのコンサルティングを活用することで、6カ月という短期間で構築できたという。

 先ごろデータベース専用機「Oracle Exadata」を導入した楽天証券もData Guardを活用している。楽天証券は、ハイエンドのUNIXサーバ6台とストレージ3台で稼働していたシステムをExadata(フルラック)1台に集約している。Exadataの中では、Data Guardで3重構成となっている。

 海外の金融機関もOracleの技術を活用して事業継続性を確保しているという。仏のBNP PARIBASはExadataを導入するとともに、プライマリサイトとDRサイトを構築している。また米Bank of AmericaもExadataを導入している。

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