ネットワンシステムズは8月24日、災害対策ソリューションの事業方針を明らかにした。仮想データセンターを活用したソリューションとコンサルティングサービスを軸に、さまざまな需要に対応していく意向だ。
既存物理環境でのDRは高コスト
企業が既存の物理環境のまま災害対策を実行するとなると、さまざまな問題が発生する。
バックアップ用の施設を用意する場合、通常のシステムとほぼ同様のハードウェアを備えなければならない。さらに、ここでのサーバはスタンバイ専用となり、平時にはいわば遊休資産ということになるなどコスト効率性が良くない。また、通常OSやパッチなどの更新、ハード構成の変更といった作業もバックアップ側にすべて反映させなければならないほか、特定の担当者への依存度が高くなることも考えられる。
同社ビジネス推進グループ マーケティング本部 ソリューション・マーケティング部の渋屋隆一氏は、「物理環境での災害対策は、高コストで復旧までの時間も長くなってしまう可能性が大きい」と指摘する。
仮想環境を構築すれば、IT資源はプールされて一元的に制御されるため、スタンバイサーバなどハードの問題やメンテナンスの手間も解消される。システムの柔軟性を高くすることで、コスト抑制や復旧までの時間短縮にもつなげられるのだ。同社の考える災害対策データセンターでは、通常のデータセンターとバックアップデータセンターで負荷分散装置を用いており、「IPルーティングによる方法などによってサイトの切り替えを高速化できる」(渋屋氏)という。
属人化しない災害復旧
災害復旧のための作業では、通常のデータセンターとバックアップデータセンターとの間のデータ交信、移動などは実績のある技術者の腕に依存することが多かったが、「支援ツールのVMware vCenter Site Recovery Managerを使用すれば、作業を簡素化することが可能になり、クリック数回程度ですませることができる」(同)という。さらに「VMware vCenter Site Recovery Managerは、通常サーバが稼働した状態でも利用できるため、災害発生時のサーバ移行の訓練をすることができる」ことも特徴だ。
同社でこれらのシステムによる復旧作業を検証した結果、「ひとつの目安としては、東京で稼働する100台ほどの仮想サーバを、災害発生時から約2時間で、災害発生の4時間前のデータに、大阪で復旧することが可能」(同)だったとしている。
同社は、今後の主流となるシステムは、通常センターとバックアップセンターという組み合わせではなく、通常センターと通常センターの相互間をサーバが自在に移動するシステムになると考えている。複数のセンターを、論理的に単一のセンターがあるかのように運用する。このような場合、レイヤ2によるネットワークでの接続を用いるとともに、遠隔地間のストレージを連携させることができる「EMC VPLEX」を利用することを想定している。渋屋氏は「EMC VPLEXは、仮想マシンがどこにあっても、最も近いところにあるストレージへのアクセスが可能になる」と話す。
一方、コンサルティングサービスでは、BCPに着手するにあたり、企業のシステム環境や課題などを診断する「ICT-BCP診断サービス」と、実際の対応方針を決定し、対策の具現化を支援する「ICT-BCP策定サービス」を提供する。
同社 サービス事業グループ プロフェッショナルサービス本部 ビジネスコンサルティング部の櫻井伸仁氏は「BCPを実行していくには、何から何を守るか、何時間で復旧できるかというような目標、対策の指標、体制などを明確化しておくことが必要」と語る。しかし、現状では、これらの要素がわからない企業、自治体などが多いため、同社では、このサービスで対策を支援していく考えだ。