そのうえで江崎氏は、今回の新製品について、「PoEに対応したシンクライアント端末ということで、節電、セキュリティ、そしてBCPといった懸案の課題を同時に解決できる期待が膨らむ製品だ。東大グリーンICTプロジェクトとしてもさまざまな形で使ってみてその有効性を見定め、ICT環境のクオリティが一層高まるようにサポートしていきたい」と力を込めた。
「ICT環境は今後5年以内に、すべてがモバイル化し、すべてがクラウドへ移行し、すべてがインメモリベースになるだろう」
(SAP AG Jim Hagemann Snabe 共同CEO)
SAPジャパンは6月12日、プライベートイベント「SAP Forum Tokyo」を都内ホテルで開催した。Snabe氏の発言は、その基調講演で、今後のICT環境の変化を予測したものである。
SAP AG Jim Hagemann Snabe 共同CEO
発言のキーワードは「モバイル」「クラウド」「インメモリ」の3つである。Snabe氏はこの3つが、いまICT環境にダイナミックなパラダイムシフトをもたらしているテクノロジだと指摘。そして今後5年以内には、ICT環境のすべてがこの3つのテクノロジに集約されると明言した。
SAPは現在、ビジネスの重点分野として、「アプリケーション」「アナリティクス」「モバイル」「クラウド」「データベース&テクノロジー」の5つを掲げている。データベース&テクノロジーというのは、すなわちインメモリデータベース「SAP HANA」に代表される分野だ。したがって、5つの重点分野のうち3つが、いまパラダイムシフトをもたらしているテクノロジということになる。
さらに同社では、HANAを5つの重点分野すべての基盤に適用していく構えだ。Snabe氏によると、「HANAはSAPの歴史の中でも最も革新的で急成長を遂げている製品だ」とし、「今年末までに1000社を超えるお客様が、HANAを活用するようになるだろう」との見通しを語った。ちなみにSAPの顧客数は全世界で19万社を超えているという。割合からすると、自社の顧客ベースだけでもまだまだ大きなポテンシャルがあると見ることができる。
このほか、同イベントでのSnabe氏の講演内容については、すでに詳細なレポートがあるので関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭で紹介した明言のほかに、筆者が興味深く感じた発言を1つ取り上げておきたい。
「私たちはこれからもビジネスソフトウェアに注力していく。ハードウェアをやることは決してない」
ソフトウェアベンダーのSAPとしては当たり前の発言だが、Snabe氏がわざわざ「ハードウェアをやることは決してない」と語ったところがミソだ。この発言の背景には、ビジネスソフトウェア分野で宿敵のOracleが最近、ハードウェアとソフトウェアを一体化した「エンジニアド・システム」戦略を押し進めており、比較されるケースが多いことがあるようだ。
例えば、データベース分野におけるOracleとSAPの今後の戦いは大いに気になるところだが、もしOracleのエンジニアド・システム戦略が明らかに優位に立ったとしたら、SAPは戦略転換を迫られることになるかもしれない。今回のSnabe氏の発言は、そうした見方をスパッと否定した格好だが、果たしてどうか。SAPが自ら手がけなくても有力なハードウェアベンダーと“一心同体”になる可能性もなくはないだろう。ホットな戦いだけに注目しておきたい。
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