米マイクロソフトが米国時間6月18日、Windows 8搭載を搭載したMicrosoftブランドのタブレット端末「Surface」を投入することを正式に発表した。
ロサンゼルスで開かれた会見で、同社のスティーブ・バルマーCEOが公表したもので、この発表を聞いた業界関係者の間には激震が走った。
数週間前から一部ではこうした憶測が飛び交っていたものの、マイクロソフトが自社ブランドでPCを投入する可能性は低いとの見方が出ていたのも事実だ。
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その背景には、これまでのマイクロソフトのビジネスがパートナーとのエコシステムを前提としていたからだ。「Microsoftのビジネスはエコシステム抜きには成り立たない」(日本マイクロソフト・樋口泰行社長)というのが世界共通のスタンスなのだ。
5月21日に来日したバルマーCEOは、PCメーカー、通信事業者、ソーシャルゲーム事業者、量販店各社など、70社100人の幹部が出席した「Windows Partner Executive Summit」で基調講演を行い、「今年はWindowsにとって大事な1年を迎える年となる。これを支えるのはパートナーの皆様のエコシステムである」と発言。「アップルとの違いは、エコシステムだ。日本市場でWindows PCが強いのは、OEMパートナー(PCメーカー)のおかげであり、それによって質の高いハードウェアやサポートが提供されている」などとし、参加した一人ひとりと握手してまわった。
これだけエコシステムの重要性を強調していたマイクロソフトが、自社ブランドでタブレット端末を発売するというのだから、業界関係者が驚かないわけはなかった。
「アップルとの最大の差別化」だったエコシステムが変わる
PCメーカーにとっては、これまで協力関係にあったマイクロソフトから、直接競合する製品が市場投入されることになる。ただでさえ激しいハードウェア市場での競争がさらに激しくなるのは明白だ。
しかも、この製品は、同社直営のリアル店舗として米国内で展開しているMicrosoft Store、そして同オンラインショップでの直販に限定したものである。つまり、販売パートナーとのエコシステムに関しても、その関係を打ち破るものとなるのだ。
マイクロソフトでは、ARMを搭載した「Windows RT」搭載タブレットは、Windows 8発売と同時。しかし、多くのPCメーカーが製品投入を予定している「Windows 8 Pro」搭載タブレットは、Windows 8発売から約90日後になるとしている。この点では、PCメーカーへの一部配慮がみられるといえよう。
だが、この発表はマイクロソフトが構築し、「アップルとの最大の差別化」と位置づけてきた同社のエコシステムの形を変えるものになるのは確かだ。
そして、見方を変えればWindows Storeを通じたアプリケーションの流通環境の構築も、マイクロソフトの管理下でソフトウェアが流通するという点で、ソフトウェアメーカーとの関係を変えるものとだといえる。
Xboxとタブレットでは意味が違う
マイクロソフトは、すでにハードウェア製品を自社ブランドで発売している経緯がある。