調査では、今後のクラウド時代に向けてデータセンターに対する要件も厳しさが増すことを予見している。特にクラウドを積極的に活用したいと考える企業では「データセンター内」はもとより「複数データセンター間」でも、柔軟なリソース増強やデータ移行/バックアップへの対応を求める傾向が表れており、高い拡張性を備えたデータセンターサービスを優先して選定する動きが強まるとみられると説明している。
アウトソーシング事業者に対しても、今後はクラウドへの対応力が厳しく問われることになると説明する。調査で「クラウドサービスを積極的に活用する」と回答した507人に対して、アウトソーシング事業者に求める能力を聞くと、クラウドへの対応力を重視するとした回答が多数を占めている。特に「コンサルティングサービス」「移行サービス」「プライベートクラウドサービス」については重視される傾向が強いことが示されたとしている。
調査結果を受けてITRのシニアアナリストである舘野真人氏は、「自社におけるIT資産の最適配分や統合化の促進、運用業務の効率化といった幅広い視点から、クラウドサービスに高い期待が寄せられていることが確認された」と説明。「今後は“どのサービスを利用するか”というマーケット主導型での選択だけでなく、“自社としてどのようなIT環境を実現したいのか”という戦略的アプローチでクラウドを選択する企業が増加するだろう」と予測している。
さらに舘野氏は「プライベートクラウドに対する導入意欲が高い背景には、機能の自在性やサービスレベルの制御力を手に入れたいというIT部門の強い要望が反映されている」と分析。「したがって、資産の所有や運用業務にかかわる負担を軽減しつつも、ユーザー企業自らの手でコントロール可能な柔軟性を備えるクラウドサービスが評価される」と提言している。
その一方で「クラウドへの移行に際しては、段階的な手順を踏むことを重視する企業が多いことから、事業者には、強固なインフラ環境を備えるだけでなく、戦略作りからシステムの移行作業、本格稼働後の運用業務に至るまで、広範囲なサポート体制を整備することが望まれる」とも提唱している。