IDC Japanは7月25日、国内の企業や団体1903の情報システム部門のトップを対象にしたIT投資動向の調査結果を発表した。国内企業の2012年度のIT投資マインドは、一部のセグメントで前年度と比較してIT投資を「増加させる」が「減少させる」を上回るなど、回復に向けた変化が見られるという。
2012年度のIT投資計画の増減を前年度よりも「増加させる」とする企業は15.5%で、「減少させる」企業の19.8%を下回っている。だが、2011年度実績と比較すると、その差は縮まっている。従業員規模100~999人の中堅企業に限定すると「増加させる」企業が25.9%と、「減少させる」企業の21.2%を上回っている。
具体的な投資領域を経年で見ると、「ビジネス継続性/災害対策」を2012年度のIT投資領域とする企業の割合は、東日本大震災直後に行われた2011年の調査と比較しても高まっている。企業セグメント別では、中堅中小企業での事業継続計画(BCP)や災害復旧(DR)対策への投資拡大が見込まれている。
一方で「ネットワーク/施設/ハードのセキュリティ強化」や「情報漏洩対策」などを投資領域とする企業は減少傾向にある。震災で意識が高まった点とあわせて、2012年度に実際に投資する点をたずねた調査結果からは、震災での意識変化がBCP/DRへの投資拡大だけでなく、スマートフォンやクラウドサービスの利用拡大に結びついていく可能性も示唆していると説明する。
IDC Japanでは、国内のITサービス市場は2012年以降にプラス成長に回復すると予測している。だが、欧州債務危機などの影響もあり、その成長は盤石ではないと説明。同社の植村卓弥氏(ITサービスリサーチアナリスト)は以下のようにコメントしている。
「ITサービスベンダーは、クラウドやモビリティなどの技術を活用してBCP/DR強化の期待に応えつつ、比較的早期の回復が期待される中堅企業向けのアプローチの強化、自らもリスクを負って顧客の海外展開を“共創”するなど、低成長市場で生き残るための事業構造の変革が求められている」