大型ストレージのトップベンダーとして知られるEMC。同社は近年、積極的な企業買収や協業関係の構築を進め、ストレージに留まらず、ソフトウェアやサービスを内包する事業の多様化に邁進している。
EMCジャパンでは、山野修社長自らが事業戦略を説明する会見を1月に開催していた。そこでは、ITで顧客のビジネスを変革するだけでなく、顧客の新規ビジネスの創出も支援するという方針を明確に打ち出している。
各界のエグゼクティブに価値創造のヒントを聞く連載「ZDNet Japan トップインタビュー」。今回は米EMC副社長 兼 EMCジャパン代表取締役社長の山野修氏に、同社の戦略、新規ビジネスの創出、ヴイエムウェアに代表される国内グループ企業との連携、そして自身の米国時代について話を聞いた。
--グループ全体、そして日本での業績をどのように分析していますか

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EMCグループ全体で業績は好調です。売上は、第1四半期が対前年同期比11%増、第2四半期は同じく10%増です。利益は概ね30%弱の増といったところですが、日本はさらに良好な状況です。
2011年の日本市場は、3月に東日本大震災があり、その影響で厳しい第2四半期を終えました。しかし、2012年第2四半期は驚くほど調子が良いのです。
その理由として、一つは「ITトランスフォーメーション」、つまり顧客のIT変革支援があります。仮想化やクラウド化のように、従来使われてこなかった領域のITを導入しようという気運が高くなっていまして、EMCのストレージ基盤を利用して、仮想化、クラウド化の基盤を構築したいという需要が大きくなっているのです。
二つ目は、東日本大震災によって、BCP(事業継続計画)、DR(災害復旧)、セキュリティを含む広義のトラスト(信頼性)を見直そうという傾向が見られる点です。バックアップ・リカバリ分野では、ストレージシステムの「Data Domain」と「Avamar」が好調で、前年比倍増の勢いです。また、RSA事業本部のサイトアタック対策——これも広義のトラストですが、やはり好調です。
三つ目はビッグデータ関連です。ビッグデータという概念は、もともと当社が最初に唱えていたこと。他社は今からソリューション化しようとしています。日本では、まだまだビッグデータと呼べるほどのデータを持つ企業は少なく、これからデータを収集する段階にあります。ビッグデータ向けストレージの「Isilon」は、上期には前年対比でほぼ倍増。日本でもビッグデータの収納が始まっているといえます。
年初の目標通り「ITトランスフォーメーション」「トラスト」「ビッグデータ」という領域が総じて大きく成長しています。
--ビッグデータの活用では、人材育成プログラムも始めていますね。日本では高額のトレーニングがなかなか根付きませんが、EMCのプログラムは引き合いが強いと聞いています