VMwareが米サンフランシスコで開催中の年次カンファレンス「VMworld 2012」。2日目となる8月28日(米国時間)の基調講演では、同社の“エンドユーザーコンピューティング(EUC)”に対する取り組みが紹介された。ここでは、5月に買収したWanovaの製品「Mirage」を中心にデスクトップ分野の取り組みを紹介する。
VMwareでは数年来、仮想デスクトップ基盤(Virtual Desktop Infrastructure:VDI)に取り組んできた。製品面では「VMware View」がその中核を担っている。
VDIでは、OSやアプリケーション、ファイルなどのデータが仮想マシンとしてデータセンターに集中配置され、エンドユーザーには基本的に画面だけを配信する仕組みを採用している。重要なデータはデータセンターにあるため、IT部門はデータセンターの管理に集中することができる。Viewは、モビリティ(モバイル性能)を拡張するとともに、データセンターにだけデータを配置するため、高いセキュリティも実現できるのだ。
しかし、長年にわたって取り組んできたVMwareにとって、VDIにはひとつの限界も見えてきたようだ。VDIの受け皿となるデスクトップPCやノートPCがハードウェア面で高速化されても、エンドユーザーは配信画面を受け取るだけなので、計算資源を最大限に活用することができない。
つまり、現行のハードウェアがオーバースペックになってしまうのだ。また、VDIでは端末とデータセンターがオンラインでつながっていることが前提。製品の導入を検討しているユーザー企業にとっては、それでは仕事にならないという声があったのも事実だという。
そこで登場するのが「Mirage」だ。Mirageの場合は、エンドユーザーが利用する端末の内蔵ディスクにデータを残す。Viewとの違いとなるポイントは、ローカルPCのディスクイメージをデータセンターでも保持し続ける点にある。
となると、ローカルPCでデータの更新があった場合、データセンターに更新分のデータを送る必要が出てくる。この領域では、Wanovaの「スマートデデュープ(スマートな重複排除)」というテクノロジを活用して、必要な更新データのみをデータセンターに送る。そうすることで、ローカルPCのパフォーマンスと配信の効率性を高めている。
利用シナリオはこうだ。エンドユーザーのPCにWindows XPが配布されているとする。その企業では、セキュリティパッチの適用、さまざまなアプリケーションの利用を従業員のモラルに任せて運用している。
しかし、パッチの適用を回避したり、利用してはいけないアプリケーションをインストールされることも多かった。そうした場合に、VDIとは異なるかたちで集中管理を実現するのがMirageだ。
Mirageを活用すると、Windows XPから強制的にWindows 7へとアップデートできる。IT管理者は、指定の期日までに新OSを展開しきれないという状況を回避できるようになるだろう。また、ポリシーを設定することで、利用できないアプリケーションを指定するなど、エンドユーザーのコンピューティング環境を適切に管理することも可能だ。