IDC Japanは9月27日、2011年の国内プライベートクラウド市場は2257億円と発表。2011~2016年は年平均成長率(CAGR)が37.6%で推移して、2016年の市場規模は1兆1132億円と予測している。
クラウドの優位性と導入課題は企業に広く認識されるようになっているとともに、東日本大震災の影響でクラウドの導入と利用を具体的に検討する企業が増加して、理解度も深まっているという。プライベートクラウドはITの効率化と柔軟性、迅速性、運用性をもたらすことから、経営戦略を支える重要な基盤になりつつあると分析。中でも大規模なシステム環境では重要な選択肢になっていると説明する。
プライベートクラウドの導入では、リソースを仮想化して標準化、プールし“サービス”として扱う必要がある。また、プールしたリソース上に、多様なインスタンスが稼働するマルチテナントアーキテクチャが重要となるために、新しい技術の導入やスキルの習得が求められる。
プライベートクラウドに関連するIT製品は日進月歩で発展し、ベンダーごとに発展は異なる。プライベートクラウドはサービス化でITの利用を容易にするが、その構築はむしろ複雑化していると指摘している。
2010年以降、多くのITベンダーが、プライベートクラウド向けにハードウェアとソフトウェアを垂直統合して、事前検証したクラウドアプライアンスを積極的に推進している。この状況は、複雑になったシステムを簡素化し、クラウド導入の障壁を下げる効果がある。
だが、オープンメインフレームとも呼ばれるクラウドアプライアンスは、システム構成の柔軟性に課題があり、必ずしもユーザー企業の要望とは合致していなかったと振り返っている。こうした事態を受けてか2011年以降、クラウドアプライアンスは柔軟性の強化と、目的指向での費用対機能や性能、容易性の向上を図っている。現在のクラウドアプライアンスは、簡素化と最適化をもたらす重要な動向になっていると説明している。
現在の国内プライベートクラウド市場は、構築にかかわる技術的障壁が急速に下がっている。その一方で、財務や運用、標準化などクラウドを活用するための課題が数多く残っていると指摘。これらの課題を解決する手段として、事業者のデータセンターやノウハウを活用する「デディケイテッドプライベートクラウドサービス」「コミュニティクラウドサービス」の高い成長が見込まれるとしている。
デディケイテッドプライベートクラウドサービスは、IT資産は提供事業者が所有して、ユーザーはそれを専有して利用するという形態。コミュニティクラウドサービスは、IT資産は提供事業者が所有し、コミュニティに参加する複数のユーザーにサービスを提供する形態。“業界特化型クラウド”や“共同センター型クラウド”として提供されることが多い。
IDC Japanの松本聡氏(ITサービスリサーチマネージャー)が次のように提唱している。「現在、国内プライベートクラウド市場での構築の“シンプル化”は有効であり、ベンダー間の差別化につながっている。だがシンプル化はベンダーロックインに対する懸念がある。運用や連携に対する課題も残っている。ベンダーは、シンプル化の発展とオープン性の維持、運用性や連携性の向上を図る必要がある」