日立とヴイエムウェアが戦略的提携:日立はクラウド事業のグローバル化を加速へ

冨田秀継 (編集部) 2012年11月05日 19時06分

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米VMwareのパット・ゲルシンガーCEO(左)と、日立製作所の渡部眞也常務
米VMwareのパット・ゲルシンガーCEO(左)と、日立製作所の渡部眞也常務

 日立製作所と米VMwareは11月5日、クラウド分野でグローバルにわたる戦略的提携に合意したことを発表した。日立はVMwareのクラウド事業者向けプログラム「VMware vCloud Datacenter Services」に参加するとともに、VMwareと研究開発で連携するなど、クラウドサービスの世界展開を加速させる。

 提携の詳細は速報記事「日立、米ヴイエムウェアのパートナー制度に参加」をご覧いただくとして、本稿では同日開催された記者会見での両社のキーパーソンによる発言から戦略的提携の背景と意図を説明したい。

 ポイントは二つある。まず、日立はVMwareをテコにしてクラウド事業のグローバル化を加速させる。裏返せば、VMwareは高信頼クラウドを提供できる力を持つ日立の参画を得て、エコシステムをより一層強化することになる。もう一点は、仮想化技術の活用が前提となった現代のIT環境で、日立はこの領域に強いVMwareのテクノロジを自社の垂直統合型製品にさらに連携させた形で組み込んでいく。

 登壇者は、日立製作所 執行役常務 情報・通信システム社 CSOの渡部眞也氏と、米VMware最高経営責任者(CEO)のPat Gelsinger氏。

 両社の初めての協業は2004年。サーバ仮想化からクラウド、ビッグデータ、そしてデータセンターへと、徐々に提携領域を拡大させてきた。

 2004年にはストレージ分野での接続認証を目的として、まずは米Hitachi Data SystemsとVMwareが提携した。2006年には日立がサーバ仮想化で「VMware ESX Server」を採用したほか、2007年には「VMware Infrastructure 3」を活用してクラウドサービスを提供。また、2012年にはビッグデータ分野の取り組みとして「VMware vFabric GemFire」を使って金融機関向けに「vRAMcloud」を提供。データセンター分野では、統合管理製品として「VMware vCenter Operations Manager」を採用したほか、ネットワーク仮想化でVMwareが買収することになるNiciraとも提携した。

 Gelsinger氏にとっては「(9月に)CEOに就任して以来、はじめての提携になる」という。

研究開発でも連携を加速

 今回の戦略的提携は、主に3つの柱からなる。

 まず第一に挙げられるのは、日立の「VMware vCloud Datacenter Services(vCDC)」への参加だ。世界では米AT&TやシンガポールのSingTelに次ぐ11社目、国内ではソフトバンクテレコムに次ぐ2社目となる。

 vCDCは、VMware認定のクラウドサービス事業者が、事前仕様にあわせて構築したインフラを通じてクラウドサービスを提供するプログラム。事業者はVMware製品でインフラを構築、運用管理も同社の製品を活用する。ユーザーはどの認定事業者のクラウドを採用するとしても、インフラは同じものを利用することになる。この一貫性によって、たとえば米国で構築したアプリケーションを欧州やアジア、さらには日本でも容易に展開できるようになる。vCDCは毎年夏に開催されるVMwareの年次カンファレンス「VMworld 2010」で発表された。翌年の「VMworld 2011」では、事業者のサービスを連携させる「vCloud Datacenter Global Connect」の提供を発表している。

 日立は同社の総合クラウドサービス「Harmonious Cloud」にvCDCを追加し、2013年度からサービスを提供する。同サービスを利用して、まずは日立自身のプライベートクラウドとパブリッククラウドを連携させていく。また、vCDCは「お客様にすでに検討を進めてもらっている」段階だと渡部氏。ビジネス面では、まずは国内の顧客にサービスを訴求していく考えを示した。ユーザーのクラウド環境のグローバル化にあわせて、国外での提供、あるいは国外の認定事業者との連携に取り組む予定だ。

 渡部氏は、提供を予定するサービスの特徴として「ミッションクリティカルでも使える高い信頼性を持ったクラウドをグローバルで作ることができるのが強み」と強調した。高信頼性を特徴としているため、先行するソフトバンクテレコムとは「(顧客)セグメントがちょっと違うのではないかと思っている」(同)という。

 二つ目の柱は、研究開発にまで踏み込んだテクノロジ連携の強化だ。横浜事業所に「日立-VMware コンピテンスセンター」を開設。vCDCに準拠したハイブリッドクラウドサービスの開発と、ITプラットフォーム製品の開発を推進する。

 日立は10月に統合システム製品「Hitachi Unified Compute Platform(UCP)」を発表しているが、この製品ラインではIaaS基盤モデルの「UCP Pro for VMware vShpere」が「VMware vCenter Server」と機能連携を果たしている。渡部氏は「UCPではVMwareの技術を活用している。この協力関係をネットワークやデータセンター全体に広げていきたい」と、さらなる連携に意欲を見せた。今後はコンピテンスセンターを活用して、両社の技術を統合したITプラットフォーム製品の開発を加速させていく。

 また、日立はサポートサービスの「日立サポート360」のグレード「プレミアム」でVMware製品をサポートすることも明らかにしている。

  • 仮想化をネットワークやデータセンター全体にまで拡大させる

  • ユーザーには重要なサポートサービスも追加

 3つ目の柱は、包括ライセンス契約の拡大だ。日立が利用しているVMware製品のライセンスをグローバルベースの包括ライセンスに移行させる。

 渡部氏は「トータルソリューションプロバイダーの日立と、技術に強いVMwareで、新しい価値を顧客に提供していきたい」とコメント。Gelsinger氏も「新たなケイパビリティを日本市場に提供する。(日立の取り組みは)それを世界に拡大できるだろう」と述べ、提携の展開に期待を寄せた。


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