野村総合研究所(NRI)は12月25日、「ビッグデータの利活用に関するアンケート調査」の結果を発表した。企業でのビッグデータの活用に対するニーズが高く、具体的な取り組みを始めている企業や今後の投資を予定している企業も出てきていることが判明しているという。
ビッグデータの活用が組織的な検討課題かどうかを聞くと、「全社レベルの検討課題(23%)」または「特定部門、部署レベルの検討課題(34%)」となり、57%がビックデータ活用を組織的な検討課題と認識している。こうした認識は、BtoB企業(49%)よりはBtoC企業(64%)で高いことが判明。加えて、企業規模が大きいほど高くなる傾向にあるという。特に売上高1兆円を超える企業では84%と、この傾向が顕著としている。
ビッグデータ活用が、組織的な検討課題になっているか(出典:NRI)
ビッグデータの活用がすでに進んでいる領域として挙げられたのは「マーケティング(26%)」「経営管理(20%)」。今後有望と思われる活用領域としては「商品企画・開発」「戦略策定」「営業」「販売促進」も挙げられ、今後のビッグデータ活用に期待が持てる領域として位置付けられていると説明している。
ビッグデータとして現在分析に活用されているのは「顧客情報、取引履歴など(50%)」が最多、次いで「ウェブログデータ(34%)」となっている。現在は活用がそれほど進んでいないが今後活用していきたいものとしては「SNSデータ(現在活用している8%、今後活用したい32%)」や「GPSデータ(同6%、同14%)」、「ICカードデータ(同3%、同10%)」が上位に挙がっている。
ビッグデータ活用の社内的な推進体制では「既存部署(58%)」や「個人担当者レベル(31%)」での活動と位置付ける企業が多く、「新設部署(4%)」や「組織横断のチーム、タスクフォースなどの時限的組織(16%)」といった専門の社内組織を設立しているという回答は限定的となっている。その検討を担当する人数は、「1~5人(47%)」または「6~10人(25%)」と、10人以下とする回答が約7割を占めている。現時点では、必ずしも大規模なリソースを投入して取り組みを進めている企業は多くないことがうかがえると分析している。
ビッグデータ活用の取り組みが進んでいない理由としては「具体的に何に活用するかが明確でない(61%)」「投資対効果の説明が難しい(45%)」を課題とする回答が多い。加えて、より具体的な課題として「担当者のスキル不足(45%)」「ビジネスとデータの両視点で検討できる人材の不足(36%)」「担当者の人数不足(32%)」「受け皿となる組織が存在しない(29%)」となっており、ビッグデータ活用を推進できる体制が整っていないと表現している。
ビッグデータの活用を進めていく場合、どのようなことが問題、課題となりそうですか(出典:NRI)
このことからNRIは、活用目的が明確でないということは、意思決定するための検討材料を持てていないことの表れであり、そこに潜む本質的な課題は「主体的に取り組める体制を整備し、具体的な検討を進めていくこと」にあると説明。こうした体制の整備が進むことで、ビッグデータの活用はより進んでいくだろうと予測している。
すでにビッグデータの活用が進んでいる一部の企業では、「実証実験の実施」「外部企業との取り組み」「関連システムの企画・開発」を並行して進めているという。これらはそれぞれ「自社ビジネスにおける活用可能性の検討」「社外にあるデータや高度な分析スキルの確保」「データを収集、蓄積し、分析するシステムの構築」につながると説明する。
NRIでは、ビッグデータ活用を実現するには“ビジネス、分析、IT”の3つの視点で検討を進めることが重要であるとし、これらを備えた推進体制を整備するためには、社内だけでなく社外を有効に活用していくことも重要であると提言している。
調査は、売上高200億円以上の企業の経営企画部門と情報システム部門それぞれの担当者を対象に7~8月に実施。228社242件の回答を得ている。