低価格iPhoneの投入圧力に、アップルのティム・クックCEOはどう応えるか
1月23日(米国時間)に発表されたアップルの四半期決算に関連するメモを簡単に残しておこう。
アップルの業績が3四半期連続でアナリストの予想を超えられなかったことで、同社の株価はこの日の時間外取引で10%以上も下落。アップルからは「売上と利益の両方で過去最高を記録」との発表があり、コンサバティブ(控えめ)で知られるアップル自身による業績見通しもクリアしたが、株式市場からはNGを出された格好に映る。
事業の当事者と外部の投資家では当然、時間の物差しが違う。株価のボラティリティなどはそれほど気にしなくていいという見方もあるだろう。
この話題に関するいつくかの記事を読んでもっとも気になったのは、投資家の反応よりもずっと重要な「消費者の反応」。簡単にいうと「いまより値段の安いiPhoneを用意しないとやばいんじゃないの」という懸念が強くなっていて、しかも、そのことを示す材料が太平洋を挟んだ両側(米国と中国)から出ているという点だった。
アップルが決算を発表する前日にはベライゾンがQ4決算を公開した。そのなかでベライゾンは「iPhone 5を買った人の割合が、iPhone購入者全体の約半分に留まった」と報告し、これが一部で注目を集めた。
ただし、2年前の2011年第1四半期からiPhoneの販売を始めたベライゾンは、「iPhoneに対する需要はいまも旺盛で、販売台数も過去最高」「同四半期中に新規登録された980万台のスマートフォンのうち、約3分の2がiPhoneだった」ことも明かしている。ベライゾンに限っては「iPhone自体の人気が落ちた」ということではないようだ。
来週にはAT&Tやスプリントの決算も明らかになるので、他の通信事業者でもおなじ傾向かどうかは、注目ポイントのひとつになろう。
また、Wall Street Journal(WSJ)は、10〜12月期のiPhone購入者の機種別内訳について「iPhone 5が約半分、4Sが32%、4が18%」で、「4Sが全体の4分の3を占めていた1年前に比べると、最新機種を選んだ消費者の割合が大幅に低下」「ただし世界全体では、iPhone 5が65%、4Sが20%、4が15%」といった市場調査の結果を紹介している。
一方、アップルのティム・クックCEOは決算発表のなかで「長い間、iPhone 5の極度の供給不足が続いたが、この問題は(時間とともに)解消に向かい、それに伴って販売台数も増加」「iPhone 4については同期中ずっと供給不足が続いた」という趣旨の発言をしたことも伝えられている。発売から2年以上経つiPhone 4には、アップルの予想を上回るほどの大きな需要がいまでもある、ということだろう。
米国の大手キャリアと2年契約する場合、現在は最新モデルのiPhone 5が199ドル、ひとつ前のiPhone 4Sが99ドル、二世代前のiPhone 4が無料で提供されている。iPhone 4の人気の理由が値段にあるのはほぼ間違いないだろう。
一方、今回の決算では、iPadやMacを含む全体の粗利率が38.6%で、iPhone 4Sが空前のヒット商品となった前年同期の44.7%と比べて大きく減少したことにも注目が集まった。ただし、これについてはiPadよりも粗利率が低いとされるiPad miniなども含めての話であること、またiPhoneだけをとっても、最新機種に比べて小売価格が安い旧世代製品がより大きな割合いを占めたことの影響を推し量れそうなデータは目にしていないことなど、なんともいえない部分が残る。
アップルの売上全体に占めるiPhoneの割合は同期に56%だった。なお、アップルは機種ごとの構成比や粗利率を公開していない。(参考記事:【図・グラフ】アップル 10-12月期決算の数字をまとめたチャート集(SplatF))