編集部からのお知らせ
解説:広がるエッジAIの動向
Check! ディープラーニングを振り返る

「在宅勤務はやめて出社せよ!」の是非

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2013-03-05 08:00

 今の時代、多様なワークスタイルを許容していくことは、優秀な社員を確保していくための重要な施策である。ネットワーク環境やデバイスの進化がその流れを加速させ、在宅勤務やリモートワーク(以下、ここではテレワークと総称する)は徐々に浸透してきている。特に日本においては今後、労働者人口の減少が見込まれるだけに、柔軟なワークスタイルを可能にして、労働力を確保していくことは重要なテーマである。

 ところが、そのテレワーク先進国のアメリカで、逆のトレンド、つまり「会社に来なさい!」と言い始める企業が見られるようになってきている。Bloomberg Businessweek誌によると、Yahoo!の人事部門が最近、在宅勤務を禁止する告知を社員に送付したという。また、Bank of Americaも、コスト削減と効率性の観点から2005年より開始したテレワークの見直しを始めている。

 GoogleやTwitterも、在宅勤務を推奨していないようだ。同誌によれば、Googleにテレワークに関するポリシーは存在していないが、同社のCFOが、テレワークはなるべく少ない方が良いと発言していることが紹介されている。テクノロジー産業は、テレワークを最も有効活用しそうなものだが、その逆を行くのは何故だろうか?

 かつて、テレワークが一般化する前は、ナレッジマネジメントの観点からオフィスデザインが注目されたことがあった。例えば、当のBloombergは、フロアとフロアの間をぶち抜いて巨大な階段を作り、そこを人が通ることでコミュニケーションを誘発する仕掛けを作りだした。衣料素材のGore-Texは、オフィスや工場を設計する際に、一拠点あたりの人数が200~300人程度、つまり、お互いを覚えることができる程度に制限することで、一体感を生み出すことを試みた。

 Businessweek誌によれば、GoogleやTwitterが出社を薦めるのは、“it generates a more collaborative atmosphere(より協力的な雰囲気を生み出す)”からであるという。つまり、テレワークが一般化し、SNSやナレッジ・マネジメント・ツールなど、テクノロジーによるコミュニケーション支援が強化された今でも、BloombergやGore-Texの取り組みが重要であることを意味する。

 最近の出社推奨の流れから、テレワークに関わる課題が浮き彫りになるだろう。つまり、通信のインフラ、セキュリティ、データの共有など、テレワークに関わる環境は整備されて来たが、それは比較的定型化された業務を対象としたもので、クリエイティビティやイノベーションを必要とするような業務に適用することは難しいということだ。ゆえに、テクノロジーを最も活用しそうでありながら、最もイノベーションが求められる企業においては、未だ在宅勤務が推奨されないのだ。

 ならば、定型業務はテレワークにして、非定型で社員間のインタラクションで解決されるような業務は出社して行えば良いじゃないかとも考えられる。至極もっともである。しかしながら、ワークスタイルの自由度が増し、グローバルなコラボレーションが可能となりつつある今、テレワークによって可能となる業務範囲はもっと拡大されて行くべきだろう。

 もし、テレワークの範囲を定型業務に限ってしまえば、企業が活用できるナレッジは極めて限定的なものとなり、その企業の競争力を削ぐことになる。ゆえに「出社せよ!」のトレンドは、今ある課題を浮き彫りにはするものの、それが中長期的なトレンドになるとは考えにくいのではないか。

Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページTwitterRSSNewsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

Special PR

特集

CIO

モバイル

セキュリティ

スペシャル

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]