3月26日付けで、キヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)の社長に神野明彦氏が就任した。キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)の副社長と兼務していた社長の芦澤光二氏は、キヤノンMJの顧問に退くことになる。
芦澤氏は「5500人の社員を擁するキヤノンS&Sを指揮できる『器』を持った人物。社員に対してマネジメント意識を徹底させてきた手腕を持つ」と神野氏を評する。神野新社長は「すべてのステークホルダーから愛され、信頼される会社を目指す。また、社員がこの会社にいることを誇りに思える会社を目指したい」と社長就任の抱負を語る。
各界のエグゼクティブに価値創造のヒントを聞く連載「ZDNet Japan トップインタビュー」。今回は、神野新社長にキヤノンS&Sの今後の事業方針などを聞いた。
――改めて伺いますが、キヤノンS&Sが持つ強みとは何ですか。
神野 最大の強みは、社員が実直であり、素直であり、それが風土として定着している点です。そして、個人だけで力を発揮するのではなく、チームワークによって戦える体制が整っているという点。営業とサービス、営業とサポート、業務と営業が連携して、お客様に接することができる。
そして、3つめには知的体育会系集団として、自ら工夫をしながら、営業活動を行う体制が整っている点です。決めたことは必ずやり遂げること、最前線まで、言葉が変わることなくトップの意思を通達できるのがキヤノンS&Sの強味だといえます。
キヤノンS&Sの社長に就任した神野明彦氏
――一方で、キヤノンS&Sが抱える課題とは何ですか。
神野 社員のスキルをさらに高めなくてはならないという点です。正確に言えば、ITやネットワークといった領域においては、一定の知識は持っているが、これを全体的に底上げしていきたい。まだまだ伸び代がある部分だともいえます。例えるならば、10人の社員のうち2~3人は高いスキルを持った社員がいるが、それを8人以上に増やしたい。
新たな商材が登場すると、高いスキルを持った社員がいる営業部は、一気に売り上げが伸びるが、そうでないところはなかなか伸びない。こうした格差を減らしていく必要があります。
今キヤノンS&Sは「Salesforce」を導入し、現場の社員がウルトラブックと「iPhone」を活用しながら営業活動を行っています。社員たちが知恵を使い、新たな使用方法を考え、これが次々と成果になっている。ここまでモバイルで成功している企業はないといえます。
この結果、営業訪問件数は4割増となり、顧客数は2年間で6割も増加している。活動量が豊富になってきたと言えます。ただ、活動量をまだまだ増やしていく一方で、この先の成長性を求めるのであれば、量だけでなく、質的向上も必要。スキルを高めることは、そうした点でも不可欠なものになります。
――神野社長の持ち味はどこにありますか。
神野 人格を尊重するというのが私の手法です。仲間になる人だけでなく、時には敵となってしまう人もいます。しかし、みんな同じ時代を形成する人たちです。それぞれの人々の人格を尊重し、向かい合っていくことが必要だと考えています。
私は、キヤノンS&Sをすべてのステークホルダーから愛され、信頼される会社にしたいと考えています。また、社員がこの会社にいることを誇りに思える会社を目指したい。
一番大切なのは『お父さんが働いている会社は素晴らしい』と言われるように、社員の家族が誇りに思ってくれる会社になることです。人格を尊重するということは、そうした姿につながると考えています。
――売上高、営業利益計画はどう描きますか。
神野 2012年度の売上高は1035億円の実績であり、2013年度は1140億円の売上高を計画しています。これを中期的に1300億円規模にまで引き上げていきたいですね。また、経常利益では、2012年度実績では14億円だったものを、2015年度には30億円に拡大したいと考えています。
ただ、社員数をダイナミックに増やす計画はありませんから、1人あたりの生産性を高め、一つの商談あたりの売上高拡大を図っていく必要がある。そのためには、社員一人ひとりがマネジメント力の充実を図る必要があります。