シンクライアントや仮想デスクトップを世界市場で展開しているDell Wyseは、これらをはじめとする同社の技術を中核に、クラウドによる新しいコンピューティングの在り方として、「Cloud Client Computing」を打ち出している。
新戦略で何が変わるのか。今後の方向性はどこを目指すのか、Dell WyseのバイスプレジデントでCloud Client Computingを担当するゼネラルマネージャーのTarkan Maner氏に話を聞いた。
――そもそも、Cloud Client Computingとは何か?
Project Opheliaを手にして話すTarkan Maner氏
Maner Cloud Client Computingは、クラウドにより、データや動画、音声をはじめ、さまざまコンテンツを極めてシンプルに供給する仕組みだ。基本的にローカルにハードディスクやフラッシュメモリなどをもたない形でセキュリティ、管理性、利用性、信頼性を高くした上で、このような環境を低いコストで提供することが基本理念だといえる。IT産業の中でも、この領域は成長性が高い。当社の売上高はこの4年で、1億ドル、2億ドル、4億ドル、さらに、いまや10億ドル近くにまで達している。この先2年くらいも伸びはさらに加速するとみている。
――Cloud Client Computingを展開していくための方策はどのようなものか?
Maner まず、ソーシャルメディア、モバイル、仮想化、集約されたソリューション、インテリジェントにモノを提供できるような仕組みが重要となっており、これらすべてがクラウドを通じて供給されるということで、ほとんどのニーズを満たせるだろう。やはり、セキュリティ、管理性、可用性、信頼性、運用管理コストの低減化が大きな鍵となる。
新たな取り組みとして「Project Ophelia」もある。これは、USBメモリスティックとほぼ同じくらい大きさの超小型マルチメディア対応端末であり、モニタにつなぐだけで、Wi-FiとBluetoothでテレビや電話をはじめ通信機器など、多様な機能を利用することが可能だ。それをわれわれは100ドル以下で提供できる。一般的なPCの消費電力は300Wだが、この新しいデバイスは1Wで稼働する。これは、Cloud Client Computingを具現化するものの一つだ。2013年はこれらをさらに推進していきたい。
――ソーシャルメディア、モバイルでは、どういう戦略をもっているのか?
Maner SNSでは、FacebookやTwitterなどが一般消費者に大きく普及しているが、企業向けでも、従業員や顧客、パートナー間のコミュニケーションにSNSは大きな効用がある。例えば、Dellグループでいえば、(Salesforce.comが企業向けに提供する)Chatterを活用することで、部署内のコミュニケーション促進を図っている。データだけでなく音声や動画でのやり取りが重要だ。
これらは、Dellの重厚なインフラで実現できている。ここで生成される膨大なデータはビッグデータとなるので、(検索ツールの)splunkや(企業向けSNSの)Yammerなども用い、それらを分析しており、その成果をCloud Client Computingに取り込んでいく。
モバイルでは、iPhoneやBlackBerryなどがあれば、リモートデスクトップのソリューションである「Wyse PocketCloud」を利用して、どこからでも、普段のデスクトップにある情報を持ってくることが可能だ。さらに、ここで大事なことは、仮にiPhoneを紛失したとしても、情報が漏洩する心配はない。セキュリティも確立している。Wyseのシステム管理のためのソフトウェア「Cloud Client Manager」を用いれば、多様なデバイスを管理できる。われわれの技術で単なるITを信頼性の高いITへと変えることが可能となる。
――Cloud Client Computingにより、Wyseの基本姿勢は変わるのか?
Maner われわれのソフトウェアのイノベーションは勢いがある。たとえばWyse PocketCloudは、スマートフォンやタブレットを介し、自分のデスクトップにリモートアクセスし、さまざまなデータを利用したり、アプリケーションを操作できるわけだが、この種のソフトではナンバーワンだ。
Wyseは、ソフトウェアの領域で300以上の特許を取得している。特に仮想デスクトップ分野では、非常に多くの技術資産をもっている。全体として、ハードからソフトへと事業の力点を移行させたわけではない。サービスも提供しており、Dellの傘下に入ったことで、Dellのサーバやストレージも含め、必要なものをワンストップで、ソフトもサービスも統合的にまとめたかたちで提供できる総合ソリューションベンダーであるといえる。それが差別化要因でもある。