オープンクラウド導入におけるメリットとして、豊富な選択肢があること、規模の経済を背景にした低コストかつ高品質の実現、導入や管理の容易性、システム間連携、ポータビリティ、ベンダーロックインがないことなどを示しながら、そのメリットの今後を紫関氏は以下のように強調した。
「グローバルなクラウドマーケットから、部品を調達し、これをもとにサービステンプレートとして開発することで、さまざまなサービスプロバイダーが活用できる環境が整う。OpenStackをサポートすることで、これに対応した製品がさまざまな場面で活用され、エコシステムができあがっていく。IBMはクラウドのオープン性に関して、コンポーザビリティ(部品化)やインターオペラビリティ、ポータビリティに目を向けている。アプリケーションサーバやメールサーバは、クラウドの機能の中に入れるのではなく、クラウドの上で誰でも使えることが重視されるだろう。今後は、オープンに実装できる環境にあるのか、OSSとして提供されているか、保守サポート体制はあるのか、ユーザーコミュニティはあるのか、事例はあるのかといった点でのフィージビリティもあわせて推進していく」
一方で、2013年に入ってリリースされたPaaSのスタンダードであるOASIS TOSCAが「今後のクラウドの鍵を握る」と紫関氏は断言する。OASIS TOSCAは、IBMとCA Technologiesが主幹するテクニカルコミッティが母体となって、Cisco SystemsやHewlett-Packard、EMCなどの企業がスポンサーとして参加している。
「IBMとTOSCAは、サービステンプレート、トポロジーテンプレート、マネジメントプランというようにトップダウン型のモデルアプローチをしており、ウェブサービスAPIやアプリケーションフレームワークなどは、TOSCAのスペックの外に位置付けられている。これによって、さまざまなウェブサービスAPI、アプリケーションフレームワークが多くのデベロッパーによって作られ、多くの人がこれを使えるようになっている。つまり、PaaS上のコンポーザルな部品として提供されることになる。これに対して、パブリッククラウド専業ベンダーは、自ら特定のウェブサービスAPI、アプリケーションフレームワークをサービステンプレートとして定義し、サービスの型ありきで提供することになる。この点が大きく異なる」(紫関氏)
紫関氏は「今後、クラウドは新たな第2ステージへと入っていくことになる。これはベンダーロックインがないクラウドの世界である。ユーザー企業もこれを求めている。IBMは、LinuxやEclipseといった取り組みを通じて、オープンスタンダードでは実績がある。IBMは、こうしたオープンなテクノロジをコントリビュートし、クラウド市場をリードし、エコシステムの発展へとつなげていきたい」とした。