リアルタイムビジネスにはクラウドが不可欠
SAPジャパン代表取締役社長の安斎富太郎氏は、クラウド事業のメリットについて「競争優位に立つためにアイデアを生み出すスピード、アイデアを実装するスピードを実現することが必要だが、ここで発生する制約を取り払うためにはクラウドを活用することが適しており、クラウドで動かすことで、コストも低くでき、時間軸も速くできる。Cloud Firstであり、Cloud Fastを実現できる。SAPは、リアルタイムを実現することが創業以来の経営理念であるが、これを実現するためにはクラウドが不可欠である」と説明した。
「SAPには、Success Factorsによるクラウドネイティブ企業としてのDNAを持ち、Aribaではオンプレミスからクラウドへと100%シフトした企業のDNAを持つ。そして、HANAという単一でオープンなプラットフォーム基盤を持っている。この3つの要素を持っているのはSAPだけであり、だからこそクラウド事業に参入すべきであり、それに向けた準備ができている」(安斎氏)
SAPジャパン 代表取締役社長 安斎富太郎氏
安斎氏は「2012年5月に、SAPはすべてがモバイルになり、すべてがクラウドになり、すべてがインメモリになると宣言したが、すでにエンタープライズモバイルでは世界一の売上高であり、クラウドではすでに2900万ユーザーという世界一のユーザー数がある。そして、インメモリのHANAは平均2.5倍のペースで成長している。日本でも、クラウドはSuccess Factorsが年率70%増で成長し、モバイルは4倍、HANAは3倍という成長を遂げている」などと各分野での成長について言及した。
「今回のクラウド事業への本格参入によって、6万8000人のすべてのSAP従業員がクラウドに関与し、これまでの資産を活用することで、5億人のユーザーがSAPのクラウドを活用する可能性がある。また、Ariba Networkの40兆円の年間取引高はクラウド戦略がSAP全体に広がることで1200兆円以上になる」(安斎氏)
安斎氏は「日本では現在、Success FactorsとAribaをあわせて、50社を超えるユーザーが当社グループのクラウドサービスを活用しているが、これを3桁(100社以上)には持って行きたい。今年度は、売り上げよりも顧客を増やすことに力を注ぐ」と意欲を見せた。「データセンターについては、米国の西海岸、東海岸、ドイツの拠点を活用するが、将来的にはアジアパシフィックへの展開も行っていきたい。また、パートナー連携も検討していきたい」と今後を語った。
SAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業本部 本部長 馬場渉氏
SAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業本部 本部長 馬場渉氏は「クラウドファースト事業本部は、Success FactorsとAribaの2つの事業会社と、Money、Customerなどの領域別の専門組織で構成される」と説明した。
「ダイナミックアダプションという方式を用いて、これまでのように慣習に従って順番に導入するのではなく、順序もタイミングも自由にバラバラにサービスを導入する形態を採用していくことになる。従来のライセンスをクラウド上でも、そのまま活用するBYOL(Bring Your Own License)や、サブスクリプション形式を採用。地域性や産業別といった観点から、ITパートナーや、産業領域別のパートナーとの連携を図っていく。今年はSAPのクラウドイヤーとして、さまざまな施策をオープンにしていく。米国では2013年度第1四半期においてクラウド単体で利益が出ている」(馬場氏)